少し歴史をふり返ると、現在のローカルガストロノミーの開花につながる動きは2000年前後から始まったと言える。それは、「日本の素材を用いた、日本らしいフランス料理やイタリア料理を作ろう」という動きの勃興(ぼっこう)。フランスやイタリア現地の素材を輸入し、現地そのままの料理を目指すそれまでのガストロノミーのあり方から大きく舵(かじ)がきられたのだ。この流れで、シェフたちは上質な農畜産物や魚介類を求めて地方の畑や漁港を訪れ、素材を産直で仕入れるように。小規模で、納得のいく素材を、自然栽培や有機栽培で育てる意欲の高い生産者が増えたことも、この流れを後押しした。つまり、シェフと生産者がコミュニケーションを直接とり、信頼関係を築くようになったのだ。シェフたちが「産地に近い自然豊かな場所で、思いきり料理をしたい」と考えるようになったのも当然といえよう。
都会のレストランもこの流れを受け、今の時代らしい地産地消を表現している。今回取材した三人のシェフもその実践者。彼らの地産地消に対する思いと、地域の素材との向き合い方を見てみよう。