小林武志
赤坂 桃の木(御田町 桃の木)
子供の頃の一番のごちそうは、祖母が作ってくれたそばです。そば粉10割で手打ちした真っ黒いそばなんだけど、ものすごくおいしかったから思い出の味になっています。そして辻調理師専門学校で学ぶために、大阪に出て知った味といえば、うどんやタコ焼きといった“粉物”です。地元の愛知で食べていたうどんやタコ焼きとは、次元が違うおいしさを感じました。たとえば大阪のうどんは、駅のホームとかどんな場所で食べても本当においしかったですね。
平成に入って料理店で働くために東京に上京してからは、“昭和の北京料理”ばかり食べていました。吉祥寺の「知味 竹爐山房」で働いていた時、休みの日も仕込みをしに店に行っていましたが、お昼までに仕事を終わらせて、荻窪の「北京遊膳」によくランチを食べに行っていました。それが修業時代の唯一の楽しみ。どの中華料理店にもあるようなメニューがそろっていて、何でもおいしかったけれど、僕はあんかけ焼きそばを好んで食べていましたね。
ここ数年は、アジア各地の中国料理店に食べに行く機会が増えて、中国本土や台湾の店で、バターやオリーブオイル、山葵、ポン酢、焼肉のタレといった調味料を普通に使っているのを見て、ある意味“衝撃”を受けましたね。
●小林武志
赤坂 桃の木(御田町 桃の木)
小林武志さんの想う「令和の味」
封印を解く
※『Nile’s NILE』2019年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています