料理人たちの昭和の味、平成の味 Ⅱ

料理人たちにとっての「昭和の味、平成の味」とは? 今回は、渡辺雄一郎さん、山本征治さん、奥田透さん、川田智也さんに伺った。

Photo Masahiro Goda. Haruko Amagata  Text Rie Nakajima. Izumi Shibata

料理人たちにとっての「昭和の味、平成の味」とは? 今回は、渡辺雄一郎さん、山本征治さん、奥田透さん、川田智也さんに伺った。

料理人たちの昭和の味、平成の味
左から。茶禅華 川田智也さん/龍吟 山本征治さん/ナベノ-イズム 渡辺雄一郎さん/銀座 小十 奥田透さん。

渡辺雄一郎
ナベノ-イズム

渡辺雄一郎 ナベノ-イズム

昭和で思い出すのは母の料理ですね。自己流トンポーローが上手で、いまだに作ってくれますよ。あとは餃子や春巻き、グラタン、ハンバーグなど。「できあいを買ったことがない」というのが母の決めぜりふです。
もう一つ、僕の人生のキーワードになっている味が、辻調理師専門学校のフランス校で勉強していた時代に、パリの「ジャマン」で食べたロブションさんのジュレ・ド・キャビアです。この衝撃の味が忘れられなくて、その秘密を知るためには潜入するしかない、と思ったのが始まりです。今、ナベノ-イズムでもお出ししているスペシャリテのそばがきとキャビアの料理も、この料理をリスペクトしインスパイアしています。
料理人になってからの平成の時代は、ソバリエの資格を取るために、そばをすごくよく食べました。せいろのシンプルな奥深さに魅了されました。もちろんフランス料理も大好きで、特にバターが好き。バターなしでフランス料理は作れないと思っています。ボキューズさんの師匠のフェルナンポワンさんの口癖で「とにかくバターをよこせ! もっとよこせ! まだだ! 何時もバターを!」というのが好きで、すごく共感します(笑)。温度帯であれだけ味とテクスチャーが変化するものって他にないですし、ソースベースの野菜の加熱、仕上げのモンテにはバターが必要ですから、フランス料理には欠かせない味の柱。日本人にとっての味噌や醤油、あるいは米みたいな存在です。プライベートでも、朝、トーストにまずいちじくのジャムを塗り、冷えたバターを削ったものをたっぷり載せて食べています。熱いトーストに塗って溶かしたバターと違って、油っこさがなくておいしいですよ! 食べ過ぎには注意ですが(笑)。

●渡辺雄一郎
ナベノ-イズム

渡辺雄一郎さんの想う「令和の味」
Un voyage vers  une nouvelle ère

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。