城沼周辺
「古城跡の森林の右数歩の処には、わが幼き頃遊びたる沼の一端、銀のかがやきたる如く閃き渡りて見えぬ。(中略)恋も、空想も、涙も、詩も、皆この一帯の青き風情ある松原の中に籠れるなり。」(田山花袋著『ふる郷』)
城沼は、館林市中央部にある東西に細長い沼だ。そばには名勝“躑躅ヶ岡”があり、四季折々の自然を楽しめる。日の光が差し入ってもなお底の見えない深碧。きらめく白波のまぶしい水面。城沼はこの地に住む人びとの暮らしに長く関わり、愛されてきた歴史を持つ。
かつて、城沼は館林城の外堀として機能していた。天文元(1532)年、いじめられていた子狐を助けた赤井照光が、稲荷の神使から得た神託をもとに建てたという伝承が残る館林城。周辺は、戦国時代には内乱で台頭した武士たちの拠点として、江戸時代には大名たちの治める城下町として繁栄した。神使が「館林は要害堅固の地」と語った通り、城沼は数々の攻防戦から城と町を守ったのだ。