館林
館林は、暑い。周囲を山に囲まれている上、東京都心に近いことから、フェーン現象とヒートアイランド現象の影響を大きく受けるせいだ。立っているだけで溶けそうな熱気のなかを見通せば、ずらりとハウスが並んでいた。この辺のハウスは、ほとんどきゅうりのものだという。
節なり会は、“環境制御”を行うきゅうり生産者たちによるスタディクラブだ。環境制御というのは、機械によってハウス内を作物が育ちやすい環境に調整する取り組み。温度や湿度、CO₂濃度などを測定して、パソコン上で管理する。「ハウスの中は40度近いですから、夏場は大変です」と、パソコン画面に表示された室温を指さしつつ、節なり会の現会長、川島英彦さんは額の汗をぬぐった。
活動がはじまった当初、節なり会は5人前後のローカルな集まりだった。それから7年、今では邑楽館林(おうらたてばやし)地区できゅうりを栽培する20人ほどの生産者が、正規会員として勉強会や現地研修を行っているほか、関東全域から集まった農家、資材メーカー、種屋など、約80人がSNS上の情報交換グループに参加している。
パソコンでのデータ管理やSNSでのやりとりを活動の中心に据える節なり会の年齢層は22〜50歳。全国の農業従事者の平均年齢が70歳近くだから、相当に若い。代々農業を続けている家の生産者だけでなく、会の存在を知ってこの地を訪れ、新たにきゅうり栽培をはじめた会員もいるという。経験や勘をあてにした仕事は、継承するのが難しい。しかしデータを基にしていれば、ハウス内の環境が数値として可視化されているから、若手や新規の生産者も良いものを作りやすいという利点がある。