
きゅうりは夏に欠かせない素材でありながら、料理店ではなかなか主役になることはない。しかしながら今回は、そのきゅうりにクローズアップする企画。「正直、苦労しました(笑)。でも結局、きゅうりは無理に主役を張る必要はないんです。それでいて、手法によっては存在感を発揮できます」
こうした考えをベースに、今回のもう一つのお題である「三つの産地のきゅうり」の性質の違いも考慮した料理を披露した。
金沢産 加賀太きゅうり
三つの産地のきゅうりについて、まず加賀太きゅうりを奥田さんは「いわゆるきゅうりとは別物。白瓜の隣にいる」と捉える。確かに実のなめらかさ、きめ細かさは瓜に近い。奥田さんはこの加賀太きゅうりで3品を考案。すなわち、一品は炊いてだしの味を含ませたのち、冷やし仕立てに。
「火を入れた加賀太きゅうりは滋味があり、実においしいのです」

種をくり抜いた加賀太きゅうりに、加賀太きゅうりを用いた3種の料理を盛り合わせた。彩りも美しいきゅうりのボートが水辺に浮かぶような盛り付けは、まさに涼を呼ぶ。3種の料理の右は、酢締めにした鯵の細切りを、昆布塩水に漬けたきゅうりの薄切りで巻いた「砧巻き(きぬたまき)」。中央は、拍子木切りにして昆布締めにしたきゅうりを、鰈の薄切りで巻いた一品。そして左は、加賀太きゅうりをだしで炊き、そのまま冷やしたお浸し。そのだしのゼリーと車海老を合わせた。身が緻密でしなやかな加賀太きゅうりを、三つの表情で表現。加賀太きゅうりの応用力の豊さを感じ、楽しむことができる前菜だ。
そしてもう2品は、生で使用。一つはかつらむきにしてから昆布塩水に漬けたきゅうりで、細切りにした鯵の酢締めを何重にも巻いた。この、芯となる素材を別の素材で巻く「砧巻き」は日本料理の伝統的な技術。「今では使われることが少なくなりましたが、やはりおいしい。復活させてみました」。口の中でハラリとほぐれる薄切りきゅうりの食感は非常に上品だ。
もう一つの使い方は、いわば砧巻きと逆の発想。昆布締めにしたきゅうりを、鰈の薄切りで巻く。パリパリしたきゅうりとソフトな魚、味の入ったきゅうりと素の鰈(かれい)のコントラストが印象的である。