胡瓜を極める-奥田透 銀座小十

日本料理では、何よりも季節感を大事にする。そんな中、「春を象徴する味が苦みなら、夏を象徴するのは青々とした風味。きゅうりはその代表格です」と奥田透さんは話す。かつ、豊富なミネラルを含む果汁には体を冷やす効果もある。夏を最大限に表現し、夏の体が自然に欲する素材。それが奥田さんの考えるきゅうりだ。

Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata

日本料理では、何よりも季節感を大事にする。そんな中、「春を象徴する味が苦みなら、夏を象徴するのは青々とした風味。きゅうりはその代表格です」と奥田透さんは話す。かつ、豊富なミネラルを含む果汁には体を冷やす効果もある。夏を最大限に表現し、夏の体が自然に欲する素材。それが奥田さんの考えるきゅうりだ。

京都産きゅうり

若鮎の唐揚げと京都産きゅうり(銀座小十 奥田透 氏)
京都
きゅうりの帽子を頭にのせた鮎の群れが泳ぎ来る―そんな光景を思わせる、愛らしく楽しい姿が印象的な一皿だ。鮎は若鮎を使い、唐揚げに。そして苦玉のある頭より少し後ろの位置に、京都のきゅうりで作る「緑酢」を丸めたものと、きゅうりの薄切りをのせる。
食べる際は、まずは頭から苦玉までを大きな一口で。緑酢と頭、苦玉が作り出す複雑な味を楽しんだあと、その余韻で腹から尾までを食べきる。
「風味や食感の強いインパクトのある頭からの一口と、穏やかな身の二口目。この二口で食べきるのが、鮎では一番おいしいと思っています。なのでこの大きさの若鮎を使いました」

京都のきゅうりは、日本を代表する軟水の影響だろうか。「はんなりとして優しい印象」と話す。
このきゅうりは、きゅうりのすりおろしと甘酢を合わせた「緑酢」に仕立て、鮎の唐揚げと合わせた。ポイントは、緑酢に木の芽、蓼(たで)をプラスしてオリジナルに仕立てる点。

「まずは頭からからかぶりついてください」
その一口で、鮎の苦みと旨みの上に、きゅうりの爽快感と青い香り、木の芽と蓼の苦みやかすかなえぐみが重なり、さらにきゅうりの薄切りの香りがかぶさる。熱々の鮎の唐揚げと冷たい緑酢、カラリとした鮎と柔らかい緑酢、パリッとしたきゅうり……さまざまな要素を込めた一口は、口の中に驚きと充実感を創出してくれる。
「一つずつの要素が、突出している。それらのバランスを取りながらまとめます」

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。