「きゅうりといえば、漬物がいちばんというのが正直なところ」と笑う飯塚さん。彼の故郷は新潟の自然豊かなエリア。子供の頃、自宅前の菜園で採れたきゅうりで作った漬物を夏場、毎日食べていたという。
そうしたベースがあるゆえ、きゅうりをフランス料理で生かすという今回のテーマには「無茶振りすぎる!」と逃げ出したかったという。しかしそこは、日本の素材や感性を柔軟に料理に取り入れてきた飯塚さん。今回は館林産、京都産のきゅうり、金沢の加賀太きゅうりを用い、それぞれがしっかりと存在感を示す3品を考案してくれた。
館林産きゅうり
穴子のフリットときゅうりを合わせた一皿では、きゅうりは2種の付け合わせで登場する。一つは種を除いて細切りにし、ソテー。もう一つは、すりおろしに。
「きゅうりは生のシャキシャキした食感が命とずっと思ってきたのですが、唯一、このソテーは好き。ロブションで働いていたとき、テュルボ(ひらめ)の付け合わせで使われていて、『これはおいしい』と思ったのです」
実際、皮のパリッとした歯ごたえとしなやかな果肉バランスがよく、きゅうりならではの食感も生きている。「ソテーすると味も凝縮します。ここでは館林産のきゅうりを使いました」
なお、もう一つの仕立てであるすりおろしは、「天ぷらには大根おろし。そこからの発想で、穴子のフリットにきゅうりのおろしを合わせました」。コクのある穴子と、爽やかなおろしきゅうりの相性は抜群だ。