室田氏は、日本の魚を乱獲や減少から守る運動にも携わっている。今回紹介したヒラマサの品も、未来の魚食のあり方を提案するものだ。
たとえば今、サンマは年々獲れなくなっている一方で、ヒラマサやブリは20年前に比べて倍ほど獲れている。「つまりこれから先、獲れる魚はどんどん変わってくるのです。昔の常識で魚を選ぶのではなく、その時獲れる魚を使うのが真っ当なのでは」。魚の旬も変化している。「ヒラマサは夏が旬と言われますが、晩秋の今もすごくおいしい。ならば、ということで今回使いました」
このように、「持続可能な食材を使う」と「食文化を変えていかねばならない」が、この料理に込められた室田氏のメッセージ。料理人は自然環境の現状を学び、常識をアップデートする必要がある、と強調する。
フランス料理の技術を使って、広い視野で今作るべき料理を作る室田氏。そこには自然に対する敬意と、よりよい食の未来への意思がある。
室田拓人 むろた・たくと
1982年、千葉県生まれ。調理師学校を卒業後、フランス料理店数店で働いたのち、「レストラン タテル ヨシノ」に入り吉野建氏に約6年間師事する。2010年に「deco」のシェフに就任。16年に「ラチュレ」を独立開業。同年にガイドブック『ゴ・エ・ミヨ』にて“明日のグランシェフ賞”を獲得。17年よりミシュラン一つ星。狩猟免許の持ち主。
●ラチュレ
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