自然への敬意、未来への意思

自然への感謝の気持ちを思い起こす という想いを込めて命名された「ラチュレ」。中でもジビエ料理は、高い評価と人気を得ている。

Photo Masahiro Goda Text Izumi Shibata

自然への感謝の気持ちを思い起こす という想いを込めて命名された「ラチュレ」。中でもジビエ料理は、高い評価と人気を得ている。

ラチュレ
(左上)ジビエ料理はラチュレの看板。お客の期待値がとりわけ高い。写真はスコットランド産の雷鳥。ジビエは室田氏自信が仕留めたもの、信頼するハンターから仕入れるもの、輸入品がそろう。
(右上)白と茶色のシックな雰囲気の、落ち着いた店内。20席(個室あり)のこぢんまりとした規模で、すみずみまでスタッフの意識が行き渡る。カウンター席もあり、一人で訪れるお客も。
(左下)2020年4月に緊急事態宣言が発令され、すぐに作ったという「ラチュレ スマイル ボックス」(2〜3人前、21,600円)。ラチュレのコースを家で楽しめる、豪華かつ充実した内容。
(右下)ラチュレがジビエ料理に力を入れていることをわかりやすく示すため、実際に料理に用いたジビエの頭蓋骨のオブジェをテーブルに置くことも。写真はアナグマのもの。

室田氏は、日本の魚を乱獲や減少から守る運動にも携わっている。今回紹介したヒラマサの品も、未来の魚食のあり方を提案するものだ。

たとえば今、サンマは年々獲れなくなっている一方で、ヒラマサやブリは20年前に比べて倍ほど獲れている。「つまりこれから先、獲れる魚はどんどん変わってくるのです。昔の常識で魚を選ぶのではなく、その時獲れる魚を使うのが真っ当なのでは」。魚の旬も変化している。「ヒラマサは夏が旬と言われますが、晩秋の今もすごくおいしい。ならば、ということで今回使いました」

このように、「持続可能な食材を使う」と「食文化を変えていかねばならない」が、この料理に込められた室田氏のメッセージ。料理人は自然環境の現状を学び、常識をアップデートする必要がある、と強調する。

フランス料理の技術を使って、広い視野で今作るべき料理を作る室田氏。そこには自然に対する敬意と、よりよい食の未来への意思がある。

ラチュレ 室田拓人氏

室田拓人 むろた・たくと
1982年、千葉県生まれ。調理師学校を卒業後、フランス料理店数店で働いたのち、「レストラン タテル ヨシノ」に入り吉野建氏に約6年間師事する。2010年に「deco」のシェフに就任。16年に「ラチュレ」を独立開業。同年にガイドブック『ゴ・エ・ミヨ』にて“明日のグランシェフ賞”を獲得。17年よりミシュラン一つ星。狩猟免許の持ち主。

●ラチュレ
東京都渋谷区渋谷2-2-2 青山ルカビルB
TEL 03-6450-5297
www.lature.jp

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。