真のラグジュアリーとは 後編

現代イタリア料理と、日本の風土や文化が融合したガストロノミー「ファロ」。料理を通して自然の多様性や新しい価値観を伝えてくれる。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

現代イタリア料理と、日本の風土や文化が融合したガストロノミー「ファロ」。料理を通して自然の多様性や新しい価値観を伝えてくれる。

ファロ
(左)新潟県三条市にある、箸で知られるメーカー「マルナオ」による特注のパスタフォーク。黒檀製。口当たりが柔らかくぬくもりがある。陶器の皿を傷つけることなく使えるのも利点。
(右)能田氏の愛用の包丁は、福井県の高村刃物製作所製「打雲 花」。抜群の切れ味で、ダマスカス鋼の特徴である木目状の模様も美しい。右3本は同社製のステーキナイフ。

加藤氏はまた、全国にあるこのような里山の自然や食文化は、30年後、50年後に消えてしまう可能性が非常に高いと危惧する。高齢化と人口減少による集落の消滅。温室効果ガスの排出とそれに伴う地球温暖化、自然環境の変化……。
「多様性のある植生、そして野の食材。こんなに豊かな宝物が日本から加速度的に失われつつあるんです。そのことを、まずは情報として伝えたい」
こうした危機感も、このデザートから発信している。

このように、今を生きる人間として、自然環境に対する責任を果たそうという意思が二人には共通している。「『何を選ぶか』というのは、自分がどう生きるかの表明でもあります。なので、食材の裏にある状況やストーリーを知ることが大事なのです」と加藤氏は話す。

能田氏は、「今までのラグジュアリーは『無駄を出す』ことに根ざしていたと思います。しかしこれからは、無駄を出すことが非常に恥ずかしいことになるはず」と話す。「ラグジュアリーは今後、安心安全、環境問題への配慮、無駄を出さないことから生まれるのでは。こうした未来へも通用する価値観を手探りし、お客さまと共有する場を作るのが、ファロでの私の仕事だと思っています」

ファロ
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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。