加藤氏はまた、全国にあるこのような里山の自然や食文化は、30年後、50年後に消えてしまう可能性が非常に高いと危惧する。高齢化と人口減少による集落の消滅。温室効果ガスの排出とそれに伴う地球温暖化、自然環境の変化……。
「多様性のある植生、そして野の食材。こんなに豊かな宝物が日本から加速度的に失われつつあるんです。そのことを、まずは情報として伝えたい」
こうした危機感も、このデザートから発信している。
このように、今を生きる人間として、自然環境に対する責任を果たそうという意思が二人には共通している。「『何を選ぶか』というのは、自分がどう生きるかの表明でもあります。なので、食材の裏にある状況やストーリーを知ることが大事なのです」と加藤氏は話す。
能田氏は、「今までのラグジュアリーは『無駄を出す』ことに根ざしていたと思います。しかしこれからは、無駄を出すことが非常に恥ずかしいことになるはず」と話す。「ラグジュアリーは今後、安心安全、環境問題への配慮、無駄を出さないことから生まれるのでは。こうした未来へも通用する価値観を手探りし、お客さまと共有する場を作るのが、ファロでの私の仕事だと思っています」