26年もの時間を経た特別な日本酒。背負っているストーリーにも引き込まれる。それが、SAKE HUNDREDが手掛ける「現外(げんがい)」だ。
SAKE HUNDREDは、ラグジュアリーと呼ぶにふさわしい日本酒を酒蔵と協力して造り、それを独自のコレクションとして販売しているブランドである。オーナーの生駒龍史氏が掲げたブランドパーパスは「心を満たし、人生を彩る」。昨今、蔵の個性を表現したハイクラスな日本酒も見かけるようになったが、SAKE HUNDREDはそれらとは一線を画す、独特のロジックで日本酒の価値にアプローチする。
「おいしさというのは、ある意味日本酒の機能的な側面です。しかし私たちが出発点とするのは、日本酒そのものよりも、飲んだ人の感情。人の心に充足をもたらすかどうかを第一に考えます」と生駒氏は話す。触れた人を別世界へ一気に引き上げるのがラグジュアリーの力。そんな力を備える最高峰の日本酒を、SAKE HUNDREDは追求する。
その際、一つのキーワードとなるのが「時間」だ。日本酒の付加価値には、原料の米や水、麹こうじ、酵母、醸造方法……などさまざまあるが、SAKE HUNDREDは時間、すなわちヴィンテージにも光をあてる。「時間はお金では買うことのできない大きな価値。時を経てこそ獲得できる深みは、他に代えがたいものです」
「現外」は、SAKE HUNDREDのコレクションの中でもひときわ特徴的な銘柄だ。まず、26年という長い熟成期間。そして、「阪神・淡路大震災を生き延びた酒」という異色の背景を持っている。
「現外は、1995年のヴィンテージ。兵庫県の酒蔵、沢の鶴のタンクにあった酒母を搾ったものです」と生駒氏。なお酒母は、酒造りの工程においては発酵途中のもの。なぜ酒母から熟成日本酒が造られたかというと―「阪神・淡路大震災で、沢の鶴は大きな被害を受けました。1月は多くのタンクで酒造りが行われている真っ最中。それらの多くが倒壊してしまった中、かろうじて残ったタンクがあった。そんな天運をまとったタンクの酒母なのだから、今搾って熟成で育ててみよう、と、沢の鶴は挑戦に出た。これが、後に現外になるのです」
実はこの酒母から生まれた酒は10年、15年経っても心を動かすような味わいを得ることがなかったという。しかし20年を経て、突き抜けたかのように深みとまろやかさを備えるようになった。生駒氏がこの酒と出合ったのはこの頃だ。「試飲して即、ラインアップに加えたいと申し出ました。私たちが扱うべきテーマを背負ったお酒だ、という直感も働きました」
現外は、上質なシェリーと共通するような深みのある香りと味を持ちながら、日本酒らしい甘みや旨みも備え、それでいて重たすぎることはない。また年を経るごとに味わいを深め、希少性も高まっていく。
変化を続ける現外の2021年を捉え、味わう。五感が喜びで満たされ、ストーリーが心を打つ。そんな無二の経験を約束する一本だ。
●SAKE HUNDRED support@sake100.com
※『Nile’s NILE』2021年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています