フランチャコルタとはイタリア北部、ロンバルディア州にある小さな地域の呼称であり、この地で厳しい基準に則のっとって造られる瓶内二次発酵の発泡性ワインの総称だ。シャンパーニュと同じ製法で造られ、同製法のイタリアワインとして初めて統制保証原産地呼称(DOCG)の認証を獲得した。つまりフランチャコルタとは、生産地と生産方式、ワイン名を表す名称である。
無数の鳥や花々が生きるセビーノ沼自然保護地区、イゼオ湖の南に位置する丘陵地に、葡萄畑が広がる。フランチャコルタは美しい自然と世界遺産の修道院を有する、貴族たちの別荘地として知られた地だ。1万年以上前の氷河の後退によって形成された、豊富なミネラルを含む土壌と良好な気象条件を持ち、中世から葡萄栽培が続けられてきた。当初は地域で消費されていたが、その歴史に転機をもたらしたのが、1960年代に初めて瓶内二次発酵による高品質のスパークリングワインを完成させた醸造家、フランコ・ジリアーニである。その後、第2次世界大戦後のイタリアの経済成長に乗り、世界に名だたる洗練されたワインブランドとして急速に躍進したフランチャコルタは、品質とともにビジネスモデルも注目され、「フランチャコルタの奇跡」と称賛されるに至る。
瓶内二次発酵では、一次発酵を終えたワインに糖分と酵母を加え、瓶内で再度発酵させる。フランチャコルタは、シャンパーニュの15カ月よりも長い18 ~ 60カ月の熟成期間が必要とされるなど、厳格な基準が設けられている。現在116あるワイナリーでは、伝統製法を守り、量産はせずに高い品質を保ってきた。この土地の葡萄は、そのままで果実に含まれる糖分が豊富なため、糖分を加えるドザージュは最低限か、ドザージュをしない「ドザージュゼロ」のものが多い。
糖分控えめで、どんな食事にも合わせやすい健康的なワインだ。また、フランチャコルタには世界で唯一「サテン」というカテゴリーがある。5気圧以下のガス圧で造る規定があり非常にクリーミーでなめらかな口当たりが楽しめる。
フランチャコルタを味わうなら、今夏、阪急メンズ東京にオープンした日本初のフランチャコルタ バーへ。イタリアの奇跡・フランチャコルタを軽食とともにバイザグラスで堪能したい。
●フランチャコルタ協会日本事務局 TEL03-6384-5925
※『Nile’s NILE』2019年11月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています