スペインにおける生ハムの歴史は古く、ローマ帝国の属州だった時代までさかのぼるとされ、ローマの地理学者ストラボンは紀元前58年に著した『地誌』の中で「イベリア半島は、ドングリを食べてまるまる太った豚を産し、その生ハムの味は格別である」と述べている。
ドングリ、すなわちベジョータである。放牧地にはエンシナ(セイヨウヒイラギ)やアルコルノケ(コルクガシ)、そしてケヒゴ(フユナラ)が多い。このような不飽和脂肪酸を多く含んだベジョータを食べて育つと同時に、放牧による豊富な運動量からイベリコ豚の肉質は赤身に脂が差し込み「サシ」の入ったものとなる。これらから作られた生ハムこそ「ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ」と呼ばれる。しかもオリーブオイルに匹敵する不飽和脂肪酸を含む優れた健康食品でもある。
モンタネラと呼ばれる放牧は10月に始まり、3月頃まで続き、この間に屠と畜ちくされる。十分な大きさに育たない豚は飼料を与えられ「デ・セボ・デ・カンポ」と呼ばれる。一方、飼料だけで育ったものは「デ・セボ」と呼ばれ、通年屠畜が可能となる。
主な産地はウエルバ県のハブゴ、サラマンカ近郊のギフエロ、エストレマドゥラ県のモンタンチェスなどで、他方、白豚から作られた「ハモン・セラーノ」の主な産地はテルエルやグラナダの背後に聳そびえるシエラ・ネバダの南斜面で地中海に面したアルプハラのトレベレスなどが知られ、原産地呼称に登録されている。
後半に続く。
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