五十鈴川に架かる宇治橋を渡ると、参道は深い森に包まれる。森の厳かな空気と静けさが、人々を天照大御神が祭られる皇大神宮(内宮)へと導いていく。
約2000年前、「大御神の御心にかなった最も美しい永遠の宮み や処どころ」として、天照大御神が五十鈴川の川上に祭られた。いにしえの日本人を魅了した森と建築の美意識は、今も変わらない姿でここにある。
第62回を迎えた式年遷宮に当たり、まず行われたのが御用材を伐採する祭儀だ。65棟もの殿舎を造営するために、樹齢400年以上の巨木を始め大量の檜が大切に用いられた。内宮、外宮両宮の宮域林では、今も200年後の御用材の確保を目標に檜が育成されている。
遷宮後、神宮は建設当初の姿となってよみがえる。ここに国を若返らせ、永遠の発展を願う意味が込められているという。古材も決して無駄にせず、全国の神社に再利用され、その心を伝える役目を果たしている。
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※『Nile’s NILE』2024年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています