日本の神社は、古くから鎮守の森といわれる森に囲われていた。人々は神々とともに森そのものを崇拝し、大切にしてきたのである。
日本最古の神社の一つ、長野県の諏訪大社では、本殿を置かない代わりに、秋宮は一位の木を、春宮は杉の木を御神木として拝している。そして、7年ごとの寅と申の年に行われる最大の神事が御お ん柱ばしら祭だ。宝殿を造り替え、社殿の四隅に御柱と呼ばれる樹齢約200年の樅もみの巨木を曳ひき建てる。
山から切り出した長さ17mに及ぶ8本の巨木を、男たちが上社約20㎞、下社約12㎞にわたって曳く。熱狂をもって迎えるのは、諏訪大社の氏子20万人と観光客。804年の桓武天皇の時代から続く、全国でも有数の勇壮さで知られた神事だ。
大社の御柱ののち、諏訪地方の各神社で小宮祭と呼ばれる御柱祭が行われる。ここでは今も、木が人々の信仰と深く結びついている。
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※『Nile’s NILE』2024年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています