神宮外苑、再開発に思う

明治神宮外苑。ラグビー場や野球場など、さまざまなスポーツ施設を含むこの緑地帯は、今まさに再開発計画が進められようとしている中、次の100年に向けての岐路に立つ。果たして神宮を彩る樹木たちは、これからどんな「明日の神話」をつづるのか。この機に森を見つめ直したい。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

明治神宮外苑。ラグビー場や野球場など、さまざまなスポーツ施設を含むこの緑地帯は、今まさに再開発計画が進められようとしている中、次の100年に向けての岐路に立つ。果たして神宮を彩る樹木たちは、これからどんな「明日の神話」をつづるのか。この機に森を見つめ直したい。

再開発でどう変貌するのか

それだけに再開発で外苑がどう変貌(へんぼう)するのかは、気になるところ。計画のポイントは主に5つ。「神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替える」「高層ビル2棟を新設する」「神宮球場併設のホテルを新設する」「伊藤忠本社ビルを建て替える」「神宮球場と軟式野球場の跡地に2カ所、芝生広場を整備する」ことが予定されている。

また開発エリアの樹木については「高さ3m以上の樹木1904本の内743本を伐採する一方、256本を移植し、556本を保存する」計画だという。
いちょう並木は保存されるらしい。そうした事業者側の説明通りなら、緑は守られる気もするが、うのみにはできない。

坂本龍一さんが亡くなる前、都知事宛ての手紙で「目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた樹々を犠牲にすべきではありません」と事業の見直しを訴えたように、せめて開発が始まる前に、住民の意見を確認すべきだったように思う。

確かに言えるのは、森の緑織りなす外苑の景観が、高層ビル中心のウンザリするような“再開発風景”に変わること。外苑に親しんできた者として、開発のあり方を一考したい。神宮の森の「明日の神話」のために。

JR原宿駅

JR原宿駅。明治神宮の鎮座後、現在の場所に移動
明治神宮造営時に集められた献木の多くは鉄道で運ばれた。旧原宿駅から北参道に向け2本の引き込み線が設置されたという。明治神宮の鎮座後、原宿駅は現在の場所に移動した。

※『Nile’s NILE』2023年9月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

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