次代につなぐ
寺西氏の生家は、江戸時代・文政年間から続く紺屋である。もともと武家だったが、前田家の御用紺屋になって3代目の時代に藩より苗字帯刀を許されたという。この頃にはもう手描き友禅の仕事が始められており、当時の図案帳紋帳が今も大切に保管されている。
明治期に入ってからは、多くの職人を抱えて、ますます盛業。屋号を「紺屋三郎右衛門」改め、「紺三」とした。
氏が紺三、現在の染元千紅(ちこう)を継いだのは32歳の時。その3年後に加賀友禅の作家になった。
以来、「自然の姿と、受けた感動を心に刻み、それを文様という色や形にして表現する」こと約50年、1000を下らない多くの作品を生み出してきた。
そんな氏が今、熱い思いで取り組むのは、次代を見据えた仕事。技術の継承のみならず、「将来に残すための作品づくり」に励む。祖先が残した図案帳に新たなページを加えながら、伝統の灯をともし続けているのである。
※『Nile’s NILE』2020年3月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています