職場で揶揄されるだけならばまだ良い。それどころか最近は我が国社会全体で「団塊ジュニア世代」に危険負担をしてもらおうという流れができつつある。その典型が、国会で議論され始めている年金改革における最新プランだ。厚生年金受給額を中心に、明らかにこの「団塊ジュニア世代」が圧倒的な損を被る中、その前後の世代が救われる流れが提示され、するすると採決に回されそうになっている。一部野党から「おかしいのではないか」「公費による損失補填(ほてん)がなされるべきではないか」という指摘こそ聞かれるが、石破茂総理大臣を筆頭に政府与党は頑としてこの点について首を縦に振らない。新聞紙上でもなぜかこの点について論点化することはなく、「団塊ジュニアの世代」はいわばスケープゴートとして扱われることを余儀なくされつつある。
「致し方ない、世代間でどこかにしわ寄せがくるとしてもオールジャパンでは救われるというのであれば……」
そんな読者の声が聞こえてきそうだ。だがしかし、そのように早合点する前にぜひ、先ほど紹介した拙著『サイレント・クレヴァーズ』を一度、図書館においてでも手にとっていただきたいのである。
なぜならば、この本の中で私は当時の公開報道に基づきつつ、こんな指摘をしているからだ。
「米国の大統領政権を支えるチームの中で対日政策の基本とされているのが実は『団塊ジュニア世代潰し』である。なぜならば人口の多い世代が富を持つような社会が構成されると、その国は隆盛を極めるからなのであって、米国としては我が国が平成バブル時代の様な地位に2度と就くことがないよう、我が国で人口が2番目に多い『団塊ジュニア世代』を徹底して無視し、スキップすることをあの手この手で画策している」
正に「敵」の術中にはまった感のある我が国。この真実を公然と語り、立て直しを始める真のリーダーこそが、今、我が国で求められている。
原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。
※『Nile’s NILE』2025年3月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています