来たる11月22日、香港で「TOKI(刻)」と銘打ったオークションが開催される。そのテーマは“日本の時計収集の世界”。オークションハウスのフィリップスが、カリスマ的オークショニアであるオーレル・バックスが立ち上げたバックス&ルッソと提携して開催するもので、日本をテーマに掲げるのは初めての試み。主催者サイドのコメントによれば「日本の時計コレクターは世界的な収集トレンドに多大な影響を与えている」という。
出品アイテムは大きく三つに分類できる。まず日本のコレクターが所有する世界的なメゾンのスペシャルピース。松坂屋で販売された未使用のロレックス「コスモグラフデイトナ」ほかパテック フィリップ、ハリー・ウィンストン、ロジャー・スミスらのレアピースが含まれている。
二つ目は、日本のメジャーブランドの貴重なモデル。18K仕様のカシオ「G-SHOCK ドリームプロジェクト」、セイコー「天文台クロノメーター」、クレドール「叡智(えいち)」などが並ぶ。
三つ目は日本の独立時計師やマイクロメゾンの作品。独立時計師・菊野昌宏氏の「ユニーク・ピンクゴールド トゥールビヨン腕時計」、またNaoya Hida & Co.からは、YGケースの裏蓋にカスタム彫金ができる「Type1D-2」、浅岡肇氏率いる東京時計精密の3ブランドからは、売り上げの全てを能登復興に寄付するユニークピースが出品される。
三つ目のカテゴリーで注目したいのが、若き30歳の気鋭の時計師、篠原那由他氏が手掛けるマサズパスタイム「那由他モデルA」である。ビンテージ時計の修復やカスタマイズなどで知られる東京・吉祥寺の名店、マサズパスタイムに所属する篠原氏は、ヒコ・みづのジュエリーカレッジ在学中の2020年、「ウォルター・ランゲ ウォッチメイキング エクセレンス アワード」において、日本人初の金賞に輝いた人物。ヨーロッパをメインとする8カ国の時計学校からの推薦で集まった若手時計師が、「レトログラード」というテーマの下で作品を提出。篠原氏は、通常瞬時に帰零するこの機構に独自の工夫を加え、緩やかに時分針が戻る「スロームービング・レトログラード」で栄冠を手にした。「大学生までは建築を志していましたが、設計しても自分の手では作れない。時計なら両方できるのでは、と思ったんです」
日本がテーマのオークションで、気鋭の若手時計師はどう評価されるのか?
1 2