「技術による躍進」をスローガンに掲げるアウディは、 他のメーカーに見られない総アルミ・ボディのA8、そし てスチールとのハイブリッドであるTTなど軽量ボディを持つのが特徴だ。軽量化は運動性能だけでなく、 燃費にも大きく貢献する。このメーカーはVWグループの中にあってプレミアム路線をとるが、その結果、環境への取り組みは前述のメルセデセス・ベンツのような 展開となっている。すなわち、アメリカ市場を狙う大型 車へのクリーン・ディーゼルの普及を目指している。
このシステムは、基本的にはやはりメルセデス・ベンツと 同じような尿素噴射式(SCR)技術を使用するが、北米でのディーゼル戦略が遅々として進まないことも考慮して、この市場には2009年より大型SUVであるQ7に ハイブリッド・システムを導入することも決定している。形式はガソリン・エンジンとギアボックスの間に電気スターター・モーターを挟み込むいわゆるマイルド・ ハイブリッドで、このシステムは後にポルシェとVWの両方に使用される。
富裕層のコールはもはや呪縛
アウディは現在、欧州向けにCNG(圧縮天然ガス)やバイオなどの代替え燃料を使用できるモデルを開発している。また、すでに取り組んでいるのはダウンサイジングで、たとえばガソリン仕様は2リッター自然吸気から1.4あるいは1.8リッター・ターボと過給機で排気量の差をカバーしている。さらに3リッターV6エンジンにはターボに代えて新たにスーパーチャージャーを搭載する計画もある。
だがこうした地道な対策を採りながらも、このメーカーの「本音路線」は変わらない。スーパー・スポーツカーR8に、6リッターV12ディーゼル・エンジンを搭載したプロトタイプを公開し たことからもわかる。最高出力650馬力、最高速度 300km/hを超すこのクルマは、おそらくシンボリック なもので、アウディが本当に売りたいのは4.2リッタ ーTDIディーゼル・エンジンを搭載するR8なのだろう。
確かに、資本主義社会では富裕層の存在は無視できない。彼らがハイパワー、ハイスピードの商品を望む以上、そこにビジネスが発生するのは当然といえば当然なのだ。
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています