知る人ぞ知るSUV界のベンチマーク
いまでこそポルシェ・カイエンやBMW Xシリーズといった背の高いクルマが当たり前のように走っているが、そうしたクルマのベンチマークとなったのは、じつはこのフォード・エクスプローラーである。というのも、このクルマは1990年のデビューからアメリカで高い人気を獲得し、数年後SUVのNo.1セラーになるほど成長した。90年代中盤はアメリカ国内だけで年間40万台以上売上げていたのである。
そんなモデルだけに後発各社はこいつの中身を徹底研究した。彼らもまたアメリカでの大成功を目論んだからだのだからムリもない。
そのエクスプローラーが今年フルモデルチェンジしたという話。日本では5月から予約販売が開始され、秋にデリバリーが開始される。
ではその内容はというと、写真を見ていただければわかるように大掛かりな変化を遂げた。見た目はグッと都会的となり、今までのイメージとはかけ離れる。日本でのエクスプローラーはどちらかというとオフロード四駆のイメージが強く、トヨタ・ランドクルーザーからの買い替えも多いと聞いている。その意味ではユーザー層が変わるのでは? と思えるほどアーバンSUVとなった。
英語の発音勉強の教材としてお使い下され
“フル”モデルチェンジということで、外観同様インテリアもグッとセンスよくまとめられた。これまでも十分ユーザーフレンドリーではあったが、今度は高級セダンのようなつくりをしている。ブラックのインパネと、それを引き立たせる光沢あるメッキ調アクセント、それに液晶画面のコントラストはじつにいい雰囲気だ。
機能的には、センターコンソールに備わる革新的なインターフェイスに注目する。MyFord Touch(マイ・フォード・タッチ)と呼ばれるそれは、車内の装備や情報を一元化したもので、エアコンやオーディオ操作を直感的にコントロールできるパネルを用意した。いうなれば、イマドキのipad感覚でスッと受け入れられるのだ。
また、それをSYNC(音声操作機能)、いわゆるボイスコントロールできるのもセールスポイント。これだと手をステアリングに、目を道路にしたままの安全な走行状態をつくり出せる。ただ、ここには英語のみというハードルも。ネイティブに近い発音でなければコンピューターは作動してくれないのだ。まぁ、それもご愛嬌。日本人に苦手な発音のお勉強にもなるので許容してくだされ。
この他では、テレイン・マネージメントシステムがある。こちらはオフロード走行時、路面状況に見合った走りをクルマが勝手にしてくれるというもの。ダイヤルを砂地や岩場、雪道などにいわせれば、エンジン出力やブレーキ、トラクションコントロールなどが連動してクルマを操ってくれる。いやぁ、じつに賢い装備である。
まるで子供に戻ったように思えるほど大きなシートに包まれる
エクスプローラーの醍醐味がその走りであることは、エンジンをかけスタートした直後にわかった。というにも、他のクルマでは味わえない感覚がスッとカラダに入ってきたからだ。
いうなれば、これは大海原を駆けるクルーザー。少ないアクセルの動きにエレガントな広いキャビンがスッと動き出す。ステアリング操作は舵を取るといったところだろう。それに、エンジンの音や路面の振動、風切り音なども見事に消され、高級感を醸し出すのもいい。じつに上品な仕上がりだ。
シートが大きいのも特筆モノ。ドライバーは自分がまるで子供に戻ったように思えるほど大きなシートに包まれる。そして助手席との間もかなり広いのを実感するであろう。とにかく余裕の空間なのだ。
そんなことが実現できたのは、今回のモデルチェンジでサイズアップしているから。そのためキャビンやカーゴスペースをより広くすることができた。ただ、おもしろいのはそれに反してエンジンを小さくしたこと。じつはこれまでのV8エンジンはなくなり、V6エンジンがメインとなった。しかも、遅れて2リッター直4なんかも追加される。この辺は時代を反映しているのはいうまでもない。
さて、そんなエクスプローラーだが、ひと足早くリリースされたアメリカで順調な滑り出しをしたそうだ。都会的なアピアランスと最先端の電子デバイスが広く受け入れられているらしい。となれば、日本でも……。秋以降の動向が楽しみである。
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※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています