・PATEK PHILIPPE
・AUDEMARS PIGUET
・JAEGER-LECOULTRE
・THE CITIZEN
・CITIZEN ECO-DRIVE ONE
・CAMPANOLA
・GORILLA
PATEK PHILIPPE
2015年に発表された「カラトラバ・パイロット・トラベルタイム 5524」は、大きな驚きをもって迎えられた。ホワイトゴールドケースにブルー文字盤を組み合わせ、冒険心を称揚する大胆な航空時計タイプのデザイン。
通常の時針とスケルトン時針によって二つの時間帯表示が可能なトラベルタイム機能を搭載。それが伝統的でオーセンティックなカラトラバの名を付けられたことも話題となった。
このタイムピースは、1936年に顧客からの特別な注文に応じて製作され、現在はジュネーブのパテック フィリップ・ミュージアムが所蔵する二つのアビエーションウォッチからインスピレーションを得ていた。
つまり、伝統にのっとって正統進化を遂げながら、パテック フィリップの新たな一面を伝えるモデルということが明かされ、驚きはたちまち称賛へと変化する。
2018年にはローズゴールドケースにブラウン文字盤仕様、また直径42mmから37.5mmにサイズダウンしたミディアムサイズのローズゴールドタイプ、さらに19年には24時間表示とアラームを追加したグランドコンプリケーションモデルなどを加え、ファミリーを充実させながら、確固たる地位を確立するに至っている。
2020年には、さらに37.5mmのホワイトゴールドモデルも加わった。やや小ぶりのモデルを好む男性はもちろん、女性からの支持も得て、ラージサイズとミディアムサイズのペア使いの可能性を広げている。
●パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター
TEL 03-3255-8109
www.patek.com
AUDEMARS PIGUET
「オーデマ ピゲにとって極めて重要なローンチなのです」
2019年1月、ジュネーブのSIHHで新コレクション「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」(以下CODE 11.59)がベールを脱いだとき、フランソワ-アンリ・ベナミアスCEOは、そう強調した。ほどなく我々はその言葉の意味を理解することになる。
オーデマ ピゲと聞くと「ロイヤルオーク」が思い浮かぶかもしれない。1972年に発表され、ラグジュアリースポーツウォッチという新ジャンルを開拓したこのモデルは、現在もリスペクトを浴びている。そんなチャレンジングなスタンスを「CODE 11.59」は継承しているのだ。
新世代の自社製キャリバーは言わずもがな。薄手のベゼルとオープンワークのラグを一体化しつつ、八角形のミドルケースは別体としたユニークな構造。内側と外側で異なるカーブを施したサファイアクリスタルは、角度により異なる表情を見せる。
「新しい1日が訪れる1分前」を意味する「11.59」にも、新たな時代を見据えたメッセージを込めた。果たせるかな、この新コレクションは、新世代の時計愛好家層、とりわけファッション感度の高い富裕層からの支持を集めることとなった。
2020年、その進化が加速している。WGとPGのバイカラーバージョンや、ブルー、バーガンディ、パープルなどの複雑にしてセクシーなスモークラッカーダイヤルが加わった。今、「CODE 11.59」がウォッチシーンの最先端を走っていることに疑いの余地はない。
●オーデマ ピゲ ジャパン
TEL 03-6830-0000
日本特別コンテンツ borninlebrassus.audemarspiguet.com
JAEGER-LECOULTRE
自社一貫生産体制を持つスイスのウォッチマニュファクチュールの中でも、傑出した技術力を誇るジャガー・ルクルト。1000時間コントロールテスト、すなわち約42日間にわたり精度、耐衝撃性、耐磁性などを社内で精査し、品質を保証している。スイスの公的精度検定COSCが15日間のテストであることに照らしても、いかに厳格かがうかがえる。
このテストは、1992年に登場したマスター・コントロールコレクションで初採用された。そのヘリテージを今に伝える最新モデルの中から、まず「マスター・ウルトラスリム・トゥールビヨン・ムーン」に注目したい。
12時位置にディスクと針表示による南北両半球対応のダブルムーンフェイズ機能を搭載。6時位置にトゥールビヨンを備え、デイト表示針がこれを遮ることなく15日から16日にジャンプする機構も同社らしい。この複雑さを超薄型ケースに収めたことも驚嘆に値する。
「マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー」は、トリプルカレンダー&ムーンフェイズとクロノグラフを、このコレクションとしては初めて組み合わせた。
「マスター・コントロール・ジオグラフィーク」は、世界の主要24タイムゾーン表示と6時位置の第2時間帯表示が連動するジャガー・ルクルト伝統のトラベルタイム機能を搭載する。
ラウンドケースに品格をもたらし、耐退色性も向上させた独自の18K素材グランド・ローズゴールドの深みのある色調も味わい深い。
●ジャガー・ルクルト
TEL 0120-79-1833
www.jaeger-lecoultre.com
THE CITIZEN
腕時計に求めるものは何か? 複雑さを極めた機械式時計の技術だろうか。贅沢な素材や宝石をふんだんに使用したラグジュアリーさだろうか。ここに紹介する「ザ・シチズン」の時計は、そのいずれでもない。そこにあるのは時計に託された本質的な機能、すなわち「精度」の徹底的な追求……。この時計の誤差は、1年間3153万6000秒のうち、1秒に満たない。
2018年、シチズン創業100周年を機に発表された、Cal. 0100は、世界中の時計関係者を驚嘆させた。自律型で年差±1秒。それをシチズンが誇る光発電機能エコ・ドライブで実現させた。それまでにも年差±5〜10秒のモデルは存在したが、その延長線上に±1秒があったのではない。
積み上げてきたものを見直し、通常の250倍以上となる8.4MHzの振動数を持つ角型のATカット振動子を採用。温度、重力、経時変化などへの特性も考慮したうえで選択された。各部品の工作精度を上げる最新技術や、時計組立マスターによる組み立てを経て、ここにたどり着いたのだ。
「ザ・シチズン」誕生25周年を迎えた今年、このキャリバーが初めてスチールケースに搭載された。これまで光発電の消費電力の課題から困難とされていた真鍮製の秒針を採用、秒目盛りに毎秒毎秒ピタリと重なる運針が、1秒の重みを実感させる。優れたものをより多くの人に……そんなシチズンの哲学が、この時計に結実している。
●シチズンお客様時計相談室
TEL 0120-78-4807
citizen.jp/the-citizen
CITIZEN ECO-DRIVE ONE
「そんな気は1mmもない」などという言い方がちまたにあふれている。一体人々は1mmというサイズをどれほどのものと捉えているのだろう?
そんなわずか1mmの世界に、とてつもない技術を詰め込んだ「エコ・ドライブ ワン」ムーブメントを、シチズンが発表したのは2016年。光発電に必要なソーラーセルをドーナツ状にし、内側に駆動系を集約した。各パーツは極限まで薄型化が図られ、光発電クオーツムーブメントとして世界最薄の厚さ1mmを実現。これを搭載した「エコ・ドライブ ワン」のファーストモデルは、ケース厚2.9mmと3mmを切った。
それから4年。「エコ・ドライブ ワン」は、さらに進化・熟成を重ね、2モデルが登場した。まずベゼルにセラミック複合素材のサーメットを配したスチールケース&ブレスレットタイプ。ケース厚は2.98mm(設計値)。ブレスレットもコマの加工精度を高め、従来のものより0.3mm薄い2.1mm(設計値)を実現した。
もう一つはケースとブレスレットにシチズンが誇るスーパーチタニウム を採用したタイプ。
軽量で極めて耐傷性が高く、耐メタルアレルギー性も備えている。ケース厚は3.5mmとし、外側はポリッシュ、中央はサテン仕上げのコマによる3列ブレスレットがセットされた。
いずれもシチズン独自の表面硬化技術デュラテクトDLCによるブラックがクールさを際立たせる。薄さだけではない質感の高さや、身に着ける満足感が格段に増してきた。
●シチズンお客様時計相談室
TEL 0120-78-4807
citizen.jp/one
CAMPANOLA
「時を愉しむ」をコンセプトに、カンパノラが誕生したのは2000年のことだ。
当初からクオーツによる永久カレンダー、グランドコンプリケーションなど、個性的で興味深いモデルをそろえ、その後も「宙空の美」をデザインコンセプトとする立体感に富んだ造形や、日本の伝統工芸を用いた文字板など、他にない進化を遂げてきた。
そして20周年を迎えた今年、これまでにもカンパノラの漆文字板を手掛けてきた会津漆の匠、儀同哲夫氏による特別な文字板を採用した2モデルが用意された。
まず「彪目金(あやめきん)」は、金虫喰塗りという伝統技法にアレンジを加えたもの。文字板に漆を塗り、種を敷き詰め、乾燥後に種をはがしてできる凹凸に金粉を蒔いて再度漆を重ねて乾かし、最後に研ぎ出すと独特の彪文様が現れる。
江戸時代にはめずらしさから「一目見れば福を招く」と言われたという彪。一つとして同じ文様の文字板がない、というのにも心惹かれる。金粉を蒔いた見返しリングもあでやかな雰囲気だ。
「暈響(かさねきょう)」は、儀同氏の代名詞というべき濃紺の漆をベースに螺鈿細工をモザイク模様のように配した。万華鏡をのぞいたときのような幻想的な世界観が文字板と見返しリングに表現された。
いずれもシチズン傘下の高級ムーブメントサプライヤーであるラ・ジュー・ペレ社製ビッグデイト付き自動巻きムーブメントを搭載。日本とスイスの技術の粋を凝らし、20周年にふさわしい傑作が誕生した。
●シチズンお客様時計相談室
TEL 0120-78-4807
campanola.jp
GORILLA
「ハイパーパフォーマンス時計」をコンセプトに、スイスのトップブランドでキャリアを積んだ二人のウォッチクリエイターが2016年に設立したゴリラウォッチ。
高級時計の血統を受け継ぎつつ、時計と車に共通の情熱を称えた、過激すぎないギリギリの極限美デザインや、カーボン、アノダイズド・アルミニウム、セラミックなどの先進素材の融合、また独特なカラーリングも特徴的だ。
「アウトロー ドリフト」は、創業時からのスクエアタイプに続く、第2コレクションの新ケースデザインのモデル。「アウトロー」とは、純正ラインナップ以外の、外観的にも性能的にも、ちょっと無法者的を気取ったカスタムカーを指す。そんな70年代アメリカン・マッスルカーの世界に敬意を表し、先進素材を組み合わせ、過去と未来をつなぐハイブリッドデザインが誕生した。
三つのアワーディスクが、時を示しながらミニッツトラックをトレースして時刻を示す複雑機構もユニーク。このワンダーリング・アワー機構のモジュールは、高級ムーブメントサプライヤーのヴォーシェ社が手掛けた。
「ドリフト ミラージュ」は同じ機構を、ゴリラウォッチを象徴するデザインのケースに搭載。「ファストバックGTエスピオナージ」と「ファストバックGTモデナ」は、片やヴィンテージカー、片やスポーツカーの世界観を、個性的なカラーリングで表現した。
斬新さだけではなく、高級時計のツボを心得たアプローチが心憎い。
●G&Rジャパン
TEL 03-5422-8087
www.gorillawatches.ch/jp
※『Nile’s NILE』2020年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています