LA DÉCIMA エクストリームの追求

2017年初夏、ラファエル・ナダルは、赤土のクレーコートを駆け巡り、世界中に大きな感動と驚愕、そして興奮をくれた。4月23日、モンテカルロ・マスターズ10度目の優勝。4月30日、バルセロナ・オープン10度目の優勝。そして、6月11日、全仏オープン“ローラン・ギャロス”で10度目の優勝。立て続けに3度ものラ・デシマを成し遂げたラファエル・ナダルの強さは、見る者を魅了してやまない。

Text Yukino Kano

2017年初夏、ラファエル・ナダルは、赤土のクレーコートを駆け巡り、世界中に大きな感動と驚愕、そして興奮をくれた。4月23日、モンテカルロ・マスターズ10度目の優勝。4月30日、バルセロナ・オープン10度目の優勝。そして、6月11日、全仏オープン“ローラン・ギャロス”で10度目の優勝。立て続けに3度ものラ・デシマを成し遂げたラファエル・ナダルの強さは、見る者を魅了してやまない。

ラファエル・ナダル
ローラン・ギャロスで10度目の優勝という快挙を成し遂げた瞬間、赤土に身を委ね、目頭を押さえて歓喜に打ち震えた、ラファエル・ナダル。

2017年6月11日。この日、ラファエル・ナダルは伝説になった。

2005年初夏、全仏オープン会場、ローラン・ギャロスの赤土コートに、19歳のラファエル・ナダルが登場した時のことは、今なお鮮明に、フランス人の脳裏に刻まれている。長髪で鋭い視線を持った、ラテンの血を強く感じさせる若者。スペインはマジョルカ島からやって来た青年は、強烈な個性と強さで快進撃を続け、観客の目を釘付けにし、大会初参加初優勝という快挙を成し遂げた。

その後のナダルの活躍は世界中が知る通り。2008年まで4年連続この大会のタイトルを手にし、10年からは5年連続優勝。もはや、彼なくして全仏オープンは語れなくなった。そして今年、1セットも落とすことなく前代未聞の10度目の優勝。“La DÉcima”と刻まれた優勝杯を抱きしめ、高らかに掲げたナダルの右腕には、リシャール・ミルのRM27-03が、鮮やかに輝いていた。

タイトル奪回という強い決意で臨んだ2010年の全仏オープン。ナダルの右腕には、常にRM 027がはめられていた。そして、2週間にわたるタフな真剣勝負の末、見事、1年ぶりに賜杯を手にした。Photo Masahiro Goda
タイトル奪回という強い決意で臨んだ2010年の全仏オープン。ナダルの右腕には、常にRM 027がはめられていた。そして、2週間にわたるタフな真剣勝負の末、見事、1年ぶりに賜杯を手にした。Photo Masahiro Goda

テニスほどタフなスポーツはないだろう。男子シングルス、5セットマッチの4大大会。球足が遅い赤土の全仏オープンでは、時に5時間を超えてプレイヤーは戦い抜く。ラファ、と愛情を込めて呼ばれる彼のプレーは、常に自身の最高を出し切り、限界を超えて突き進む美しさがある。内に熱い闘志をたぎらせつつも、冷静沈着なプレー。いい時も悪い時も感情を顔に出さない。冷たくも熱い血が通う、彼は戦士だ。

球足が速いグラスはもちろんハードに比べても球足が遅い、クレーコート。サービスエースや、サービス&ボレーなどの短い戦略では、全仏で勝つことはできない。じっくり時間をかけ走り抜いた末に相手のエラーを誘ったり、ラインギリギリの深いショットで相手の腕が届かない場所に丁寧に球を打ち込まなくてはいけない。ラファは、ワンポイントずつ、その瞬間に全力を尽くして立ち向かう。究極の気迫が、長い試合時間中ぶれることがない。いまだかつて、彼が、試合中に大声を出したり、ましてやラケットを投げつけるシーンなど見たことがない。ラファが挑むのは、常に自分自身の限界だ。

ローラン・ギャロスは、自分のキャリアにとってなによりも大切な場所。と、10個目となる“ムスカテール・カップ”を抱きしめた。
ローラン・ギャロスは、自分のキャリアにとってなによりも大切な場所。と、10個目となる“ムスカテール・カップ”を抱きしめた。
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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。