セイコーが手掛けるドレスウォッチブランド、クレドールが、2019年に生誕45周年を迎えた。「クレドール」とはフランス語で“黄金の頂き”を意味する言葉。
針やブレスレットなどの職人技による細部の作り込みまでもが美しいのはもちろん、日本の伝統工芸とのコラボレーションに取り組むなど、日本発のマニュファクチュールとして、“クラフツマンシップ”への深い敬意を提唱してきたブランドでもある。
昨今のクレドールを代表するコレクションが、2016年に登場した「リネアルクス」だ。最初に発売されたレディースモデルのテーマとなったのは、“水”。流れゆく水の、滑らかな曲線をイメージした時計は、どこまでも丸みのあるデザインを魅力とする。
膨らみのあるボンベダイヤルから手に吸い付くようなブレスレットのコマの丸み、そしてアーカイブからインスパイアされたという特徴的なラグのデザインに至るまで、全てが曲線で構成されているのが特徴だ。かつ薄く湾曲させた文字盤に施したダイヤモンドセッティングや立体的なインデックスなどのディテールに、シンプルながらもセイコーの卓越した職人技がのぞく時計として愛されてきた。
昨今では女性向けの“水”に対して、“氷”をモチーフとした男性向けモデルも登場。曲線を主とするレディースモデルとは異なり、メンズモデルは直線的なラインで力強さを描き出した。
そしてこの45周年となる記念すべきアニバーサリーを飾ったのが、1880年創業の安藤七宝店とのコラボレーションウォッチだ。メンズモデルには“暁の氷”をイメージしたブルーが、レディースモデルには“曙の水面”を思わせるオレンジのエナメルが施されている。
前者には時計のフォルムに合わせて八角形が重なり合うように、後者には波模様の彫金を施し、その上に釉薬(ゆうやく)を載せバスタイユ技法により、うっすらと模様が浮き出る、奥行きのある美しさをかなえることとなった。
かつ釉薬差しから焼成、研磨までを3回繰り返すことで青とオレンジのエナメルは実に深みのある独特の発色に。殊にオレンジの繊細なグラデーションを作り上げていく技術は難しいとされ、それが可能な職人は安藤七宝店にも一人しかいない。
通常のエナメル製品の厚みが約1~1.5mmであるところ、これらの工程を文字盤の上の0.3mmの薄さの中で仕上げた意匠は、まさに“芸術”と呼ぶにふさわしい輝きを放っている。
かつこれらの時計に搭載されたムーブメントは、いずれも自動巻き。「リネアルクス」では初となるメカニカルモデルであり、女性用には小型ながらも50時間のパワーリザーブを誇る新開発の「キャリバー2 L 75 」が搭載されている。
日本が誇る伝統工芸とマニュファクチュールとしてのクラフツマンシップのコラボレーション―二つの“匠”の技が融合したこのスペシャルモデルは、クレドールの新たなる門出を祝うにふさわしい、圧倒的な存在感に満ちている。
●セイコーウオッチ お客様相談室
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※『Nile’s NILE』2019年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています