創業からわずか20年あまりで、高精度を誇る自社ムーブメントまで開発してしまった新進のマニュファクチュールブランドをご存じだろうか。「ダマスコ」という創業者の名前を冠すそのブランドは、もともと金属加工メーカーとして手腕を発揮していたコンラッド・ダマスコ氏の熱烈な時計好きが高じて1994年に誕生した。ドイツ南東部、中世の趣を残す都市としてユネスコ世界遺産にも登録されているレーゲンスブルクに工房を構え、コンラッド氏を中心としたダマスコファミリーが、互いの得意分野を生かした時計作りを行っている。
彼らの真髄とも言えるのが、徹底した新素材の研究開発と堅牢性や精度の向上を目指した技術的革新だ。他社からの部品供給に頼るブランドが多い中、90%を自社で製造し、絶え間ない研究開発の末に取得した特許の数は80を超える。時計を愛する人に最高の完成度と精度を届けたいというダマスコファミリーの思いがドイツ時計界におけるリーディングブランドとしての揺るぎない地位を確立させたのだ。
徹底した研究開発の成果はまずケースの堅牢性に見てとれる。地金から切削加工を施した後、超硬化処理を施すことで、時計業界で一般的に採用される硬度の4倍にまで高めたステンレススチールケースの開発に成功。キズがつきにくいだけでなく、強打による凹みや変形にも耐える硬度の高さを実現した。全モデルに耐磁性を考慮したインナーケースを装備し、10気圧防水を備えるというドイツ工業規格にのっとった真摯(しんし)なもの作りもダマスコらしい。
そして、彼らの技術革新の集大成とも言えるのが内部の要であるムーブメントだ。2011年に発表したダマスコ初となる自社製手巻きキャリバー「H 35」には、以前から積極的に開発していた「EPSⓇ」と呼ばれる特許技術により製造されたシリコン製のひげゼンマイと脱進機を搭載。金属より軽く、変形しづらいうえに、磁気の影響を受けにくいため、ムーブメントに加わる姿勢差や衝撃、遠心力に対して高い耐久性を発揮することができる。緩急機にフリースプラングをセットすることでより高度な精度調整を可能にしている点も加えておきたい。ともに高級腕時計ブランドが採用している高度で高価とされるものだが、同部品搭載モデルを40万円程度からという価格で提案しているのはダマスコだけが持つ強みである。
そんなダマスコが誇る精度や耐久性の高さは主力ラインであるパイロットウォッチを通して人気を博してきたが、より幅広く日常的に楽しめるドレスウオッチを提案したいとの思いから生まれたラインが「エレガント」だ。上品でモダンなデザインのモデルで、3時位置に日付、9時位置にスモールセコンドを配したシンプルながら鏡面仕上げのケースが美しい一本。今春にはブルー文字盤が新しく発表された。ぜひ実際に腕にのせて、ダマスコの時計作りの熱量を感じてほしい。
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※『Nile’s NILE』2018年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています