エイジングケアは予防
医学大阪・梅田にある堂島ライフクリニックの佐藤守仁院長は、抗加齢医療を基本にした治療に取り組んでいる。
20年以上の救急医療経験者である佐藤先生は、慢性疾患が悪化した患者が後を絶たず、一時的な改善にもかかわらず根本的に治らないケースを経験した。
2000年代初めに抗加齢医療を知り、動脈硬化を点滴で改善できることに驚き、「今までやってきたことって何だったんだろう」との疑問から統合医療・再生医療の道を模索。
13年にはクリニックを開業し、保険診療の範囲外での治療法提供を始めた。
「よくアンチエイジングと言われますが、僕はリバースエイジングと呼んでいて、中年初期頃の若さを維持していく予防医学が重要だと考えています」と佐藤先生は語る。
老化は必ずしも悪ではない
抗加齢医療の専門家である佐藤先生は、老化自体は本来悪いことではないと言う。
「人間は進化の過程で老化を選んだ動物であり、細胞の老化は体を守るための自然なメカニズム」だと述べた。
しかし、老化が進むと老化細胞が毒素を放出し、周囲の細胞も老化。これにより様々な機能低下や見た目の老化、臓器の機能低下が生じると指摘している。
老化細胞除去理論「セノリティクス」
近年、老化細胞が引き起す健康への弊害を取り除く方法の一つとして、セノリティクス理論が注目を集めている。セノリティクス理論とは、「老化細胞を早いうちに除去してあげることによって、老化の進行を引き止める」ことだという。
セノリティクス (Senolytics) とは、老化の溶解を治療のターゲットとする概念で、「老化 (senosence) 」と「溶解 (lysis) 」を掛け合わせた造語である。 2000年代に入ってから研究が進み、現在では、老化細胞を除去するための薬の開発が盛んに行われている。日本でも、東京大学の中西教授による老化細胞除去薬「GSL1(グルータミナーゼ1)阻害薬」などが話題になった。医薬品では人の治験が始まっており、ますます若返りに対する期待値が高まっている。サプリメントではケルセチンなどがセノリティクス効果を期待できると注目されている。
若さを保つと期待される成分
エクソソームや幹細胞培養上清液が注目される理由は、細胞間コミュニケーションでの役割と、様々な疾患への応用が期待される点だ。
「正常な細胞から取られたこれらの物質は、正常な状態に分化させる能力がある。精製されたものを点滴すると、眠っている幹細胞が新しい正常細胞を生み出す可能性があり、老化した細胞は除去されることもあるんです」
エクソソームや幹細胞培養上清液が的確なターゲットを見つける仕組みについて尋ねられると、「幹細胞には悪い場所への移動機能があります。これがDDS機能と呼ばれているもので、これらの物質が体内に取り込まれ、必要な部分で機能する可能性が高いと考えています」と答える。