1960年にフランク・マクファーレン・バーネットが免疫監視機構の理論を提唱して60年が経った今、樹状細胞を頂点にした免疫療法が広がっている。新しいがん治療法として注目を浴びる免疫療法は、体内の免疫細胞の数を増やし、がん細胞を攻撃する治療法だ。長年免疫療法を研究してきた新横浜かとうクリニックの院長・加藤洋一氏は、働き盛りの40~50代にこう警告する。
「がんに対する免疫力は、20代の時がピーク、がん細胞を攻撃する免疫細胞であるリンパ球の数が平均で2400個あります。リンパ球は加齢で減少し、70代ではその数が1600個まで低下。がんへの攻撃力が弱まり、がんの発症率が高くなります。しかし40〜50代でもさまざまな要因でリンパ球数が減少すれば、がんを発症します」
40〜50代でも5人に1人が、がんを発症しやすい低リンパ球血症で、がんになる確率は非常に高くなる。
「家族にがんの方がいる場合は、血縁者のリンパ球数も少ない傾向があり、がんになる確率も高いのです」
こうした遺伝的要因に加え、自律神経のバランス不全もがん発症率に大きく関係するという。
「昼間の活動時間は交感神経が働き、夜の休んでいる間に副交感神経が働きますが、がん細胞は昼間、人間が活動し活性酸素が増えることで、刺激を受けて増殖をはじめます。一方がん細胞を攻撃するリンパ球は、交感神経が働いている昼間は休み、副交感神経が働く時間に働いてくれます。現代人の生活パターンは大別すると2つのタイプがあり、まず女性に多く『血圧が低めで体温も低い』。ストレスタイプと言って、副交感神経優位であり、このタイプは交感神経が働いている時間が短いため、免疫細胞が休む時間が短いので、リンパ球が疲れてきてうまく働かない。もう一つは男性に多い、仕事を夜中まで頑張ったりする過労タイプ。こちらは『血圧が高い』。交感神経が働いている時間が長いので、副交感神経の働きが弱くなり、リンパ球の働く時間が短いため、がん細胞の増殖が抑えられないのです」