よみがえったジェンタのDNAの可能性

“時計デザインのピカソ”と称され、数々の名作を世に送り出したジェラルド・ジェンタ。彼がデザインした1976年のオリジナルモデルにインスパイアされた「インヂュニア・オートマティック40」がIWCから登場した。時計愛好家のみならず、あの「鬼滅」ファンにまで響く、魅力と可能性を多角的に検証する。

Text Yasushi Matsuami

“時計デザインのピカソ”と称され、数々の名作を世に送り出したジェラルド・ジェンタ。彼がデザインした1976年のオリジナルモデルにインスパイアされた「インヂュニア・オートマティック40」がIWCから登場した。時計愛好家のみならず、あの「鬼滅」ファンにまで響く、魅力と可能性を多角的に検証する。

インヂュニア・オートマティック40
1976年に時計デザインの巨匠ジェラルド・ジェンタがデザインを手掛けた「インヂュニアSL」のDNAを受け継ぐ新作。軟鉄製インナーケースにより4万A/mの耐磁性を備えながら、10.7mmの厚さで装着感も快適。全4タイプの中のシルバーメッキダイヤル仕様。自社製自動巻きキャリバー32111搭載。「インヂュニア・オートマティック40」自動巻き、ケース径40mm、SSケース×SSブレスレット、10気圧防水、1,628,000円。

このところ耐磁性に優れた時計のニーズが高まっている。生活の中にスマホ、パソコン、タブレット端末などがあふれ、機械式時計が磁気帯びリスクにさらされる場面が増えてきたからに他ならない。バッグの留め金など、意外なところにひそむマグネットもあなどれない。

IWCの「インヂュニア」は、高い耐磁性を備えた腕時計のパイオニア的な存在として、つとに知られてきた。1955年にファーストモデルが登場した当時から、その名が示すとおり、磁気帯びリスクの高い現場で働くプロフェッショナルなエンジニアのためのタイムピースとして支持を集めてきた。

76年にはデザインを一新した「インヂュニアSL」が登場。これを手掛けたのは、“時計デザインのピカソ”とも称される巨匠、ジェラルド・ジェンタだった。40mmのステンレススチールケースとブレスレットを一体化したフォルム、ねじ込み式のベゼルには専用ツールをはめ込む五つのくぼみがあり、ダイヤルにはグリッドパターンが施された。一目でそれと分かるアイコニックな要素は、その後の「インヂュニア」にも受け継がれていく。

今春ジュネーブで開催された新作エキシビション、ウォッチズ&ワンダーズで、IWCはこの「インヂュニアSL」を忠実になぞりながらアップデートした新生「インヂュニア・オートマティック40」を発表した。

IWCのチーフデザインオフィサーであるクリスチャン・クヌープ氏は、このモデルをこう語る。

「76年のジェラルド・ジェンタのオリジナルデザインのDNAをキープすることを、まず重視しました。ケースのシルエット、ベゼル、Hリンクのブレスレットなどの特徴的なデザインコードを踏襲しながら、徹底的にアップデートを試みました」

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。