このところ耐磁性に優れた時計のニーズが高まっている。生活の中にスマホ、パソコン、タブレット端末などがあふれ、機械式時計が磁気帯びリスクにさらされる場面が増えてきたからに他ならない。バッグの留め金など、意外なところにひそむマグネットもあなどれない。
IWCの「インヂュニア」は、高い耐磁性を備えた腕時計のパイオニア的な存在として、つとに知られてきた。1955年にファーストモデルが登場した当時から、その名が示すとおり、磁気帯びリスクの高い現場で働くプロフェッショナルなエンジニアのためのタイムピースとして支持を集めてきた。
76年にはデザインを一新した「インヂュニアSL」が登場。これを手掛けたのは、“時計デザインのピカソ”とも称される巨匠、ジェラルド・ジェンタだった。40mmのステンレススチールケースとブレスレットを一体化したフォルム、ねじ込み式のベゼルには専用ツールをはめ込む五つのくぼみがあり、ダイヤルにはグリッドパターンが施された。一目でそれと分かるアイコニックな要素は、その後の「インヂュニア」にも受け継がれていく。
今春ジュネーブで開催された新作エキシビション、ウォッチズ&ワンダーズで、IWCはこの「インヂュニアSL」を忠実になぞりながらアップデートした新生「インヂュニア・オートマティック40」を発表した。
IWCのチーフデザインオフィサーであるクリスチャン・クヌープ氏は、このモデルをこう語る。
「76年のジェラルド・ジェンタのオリジナルデザインのDNAをキープすることを、まず重視しました。ケースのシルエット、ベゼル、Hリンクのブレスレットなどの特徴的なデザインコードを踏襲しながら、徹底的にアップデートを試みました」