3,153万6,000。この数字が意味するものは何か? 1年365 日を秒に換算すると、3,153万6,000秒。そのうちの1秒に満たない誤差しか生じない機械が、時計はもちろん、他のジャンルにも存在するだろうか? 標準電波やGPS衛星からの電波を受信することなく、自律した時計内部の機構だけで年差±1秒という驚異の高精度を、光発電式のエコ・ドライブで実現したキャリバー0100をシチズンが発表したのは、創業100周年を迎えた2018年のこと。この世界最高精度は、クオーツウオッチのメカニズムを根本的に見直すことで実現された。
まず精度の要となる水晶振動子。一般的なクオーツウオッチでは、音叉型と呼ばれる中央にスリットの入った水晶振動子が用いられる。これに対して、キャリバー0100ではATカット型と呼ばれるスリットのない平板状の水晶振動子を採用。音叉型に電圧をかけると毎秒32768Hzで振動するが、ATカット型は、その256倍ものおよそ840万Hzの高振動を生む。加えて温度や重力の影響を受けにくいメリットも有している。
このATカット型水晶振動子にエイジングを施して熟成させ、その中でも経時変化の少ない安定したクオリティーのものだけを厳選。さらに、1分ごとに温度をモニタリングし、温度変化によって生じる水晶振動子の周波数の変化を補正する「温度補正機能」までも備えている。
パーツ製造に関しても、LIGA工法と呼ばれる最新の微細構造物形成技術を導入し、工作精度を極限まで高めた。さらにバックラッシュという歯車がかみ合う際に生じる、ごくわずかなあそびさえも抑制するため、LIGA工法による特殊な形状のバネを組み込んだ「三番戻し車」を新開発。これにより毎秒毎秒、秒針がブレることなく、ぴたりとマーカーに重なる。超高精度ならではの、純度の高い1秒までもが表現された。
このキャリバー0100を、高品位にふさわしいイエローゴールドケースに搭載した「ザ・シチズン AQ6032‐03P」が登場した。ピュアなラウンドケースに、高精度をつかさどる水晶をモチーフとするシャープなフォルムのラグを組み合わせ、力強く時刻が読み取りやすいヘールカット形状の時分針、独特な輝きを放つ長い真鍮製の秒針などが、端正かつ品格あふれる表情をつくり出す。
ダイヤルには国の無形文化財に指定されている手漉き和紙「土佐清帳紙」を採用。楮を原材料に昔ながらの方法を守り、薄く丈夫で、発電のための光の透過性を確保しつつ、簀の目と呼ばれる独特の縦縞文様が浮かび上がり、一つとして同じものがない手作りならではの味わいに富む。
6時位置とリュウズには「ザ・シチズン」のシンボル「イーグルマーク」を配し、ケースバックからは、黒ルテニウムめっきを施したキャリバー0100の矜持に満ちた姿を観賞できる。
純度の高い1秒1秒を、このうえなく大切に刻むタイムピース。1秒の貴重さを知る選ばれし50人のみの腕で、他にない存在感を示すことだろう。
※アナログ式光発電腕時計(自律型)として。
2022年4月現在、シチズン時計調べ
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