時計の未来を刻む矜持

オンラインによる新たなタイムピース発表のプラットフォームとなった「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2021」。初参加したパテック フィリップは、ニューノーマル時代を見据えながら、伝統性を重視する一方、先進的な技術にも果敢に挑み、時計愛好家や関係者を感嘆させた。全てのモデルがハイライトというべき、完成度の高い新作群に、パテック フィリップの充実の“時”を見る。

Photo Masahiro Goda Text Yasushi Matsuami

オンラインによる新たなタイムピース発表のプラットフォームとなった「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2021」。初参加したパテック フィリップは、ニューノーマル時代を見据えながら、伝統性を重視する一方、先進的な技術にも果敢に挑み、時計愛好家や関係者を感嘆させた。全てのモデルがハイライトというべき、完成度の高い新作群に、パテック フィリップの充実の“時”を見る。

パテック フィリップを象徴する一つ「カラトラバ」

微細なピラミッド型のモチーフが連なるクルー・ド・パリ装飾をベゼルに施した、「カラトラバ」は、パテック フィリップを象徴する一つといっていい。

カラトラバ
(上)シックなチャコールグレー文字盤を採用。縦サテン仕上げをベースに、繊細な同心円模様のスモールセコンドサークルとの絶妙のコントラストが味わい深い。「カラトラバ 6119G」手巻き、直径39mm、WGケース×アリゲーターストラップ、3気圧防水、3,399,000円。
(下)ピュアで洗練されたグレイン仕上げのシルバー文字盤を採用。18Kローズゴールド製のインデックスや針とのコンビネーションも優美。「カラトラバ6119R」手巻き、直径39mm、RGケース×アリゲーターストラップ、3気圧防水、3,399,000円。

1932年に「カラトラバ96」が誕生した2年後の34年には、このベゼルを備えた「カラトラバ96D」が登場。そのDNAは、85年に登場し20年以上にわたって製作された伝説的な「3919」、そのリニューアル版というべき2006年発表の「5119」などへと、脈々と受け継がれていった。

実はクルー・ド・パリ装飾のモデルは一部の限定モデルを除いて19年以降、製作されていなかった。今回「カラトラバ6119」となってカムバックしたことを歓迎したい。わずかに大きくなった直径39mmのRGケースにシルバー文字盤を配した「6119R」と、WGケースにチャコールグレー文字盤を備えた「6119G」の2バージョンが用意された。

ともにオビュ(弾丸)型の植字インデックスとドフィーヌ型時分針、またカーブしたラグを採用し、往年の「カラトラバ96D」、それに先立つ「96」を彷彿させる。

手巻きキャリバー30-255 PS
新開発の手巻きキャリバー30-255 PSには、ロングパワーリザーブよりも、安定した強いトルクを得ることを眼目として、ツインバレル方式が採用された。厳格な時計製作の伝統にのっとって仕上げられた機能美をサファイヤクリスタル・バックから心ゆくまで鑑賞したい。

搭載するのは、新開発の薄型手巻きキャリバー30-255 PSである。安定した強いトルクを生み出すために2個の香箱を備え、65時間のパワーリザーブが実現されている。将来を担う手巻きのベースキャリバーとしても、期待が大きい。

伝統的な美学と先進的なパフォーマンスが統合された新生カラトラバの誕生を祝福したい。

1 2 3 4
ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。