
近年、早稲田大学、慶應義塾大学、上智大学の間でパワーバランスに変化が見られる。かつて「早慶上智」とまとめられたこれらの大学は、早稲田が優位に立ち、上智は低迷している。小倉健一氏は、この変化の要因を解説し、特に数学の重要性に焦点を当てている。
**■ 「DeepSeek」と教育における数学の重要性**
近年注目されている中華製の生成AI「DeepSeek」は、その性能がアメリカのトップAIと同等でありながら、開発コストが10分の1以下であると話題になった。その理由は、数学の問題を多く学習させ、AIに論理的思考能力を身につけさせるアプローチにあります。従来のAIは大量のデータと質問を学習させていたが、「DeepSeek」は論理的推論力を高めるために、数学的思考を重要視しました。この方法は学習データの量を抑えつつ、高い性能を実現し、コスト削減にもつながっています。この手法は人間の教育にも影響を与え、数学の学習が論理的思考の基盤を築くことが示唆されています。
**■ 数学が人生に与える影響**
数学的な才能があると認定された人々の追跡調査によると、数学に優れた人々は職業的成果や創造的業績、心理的幸福度などで顕著な成果を上げています。また、数学不安を抱えることが将来の選択肢を狭め、生活の質が低下することが示されています。数学を学ぶことが社会的成功やキャリアに不可欠であることが強調されています。
**■ 早稲田大学の改革とその成果**
早稲田大学は、数学を受験の必須科目として導入し、従来の暗記型の試験から論理的思考力を重視する方向に舵を切りました。この改革により、受験生の質が向上し、慶應義塾大学を偏差値で上回るまでになりました。数学を重視した入試制度の改革は、早稲田大学にとって大きな成功をもたらし、現在の難関私立大学の序列で早稲田がトップに立っています。
**■ 慶應義塾大学の伝統と入試制度**
慶應義塾大学は「独立自尊」の精神を掲げ、伝統的な入試制度を守り続けています。慶應の入試では、学力だけでなく、思考力や柔軟性が重視されるため、小論文が特徴的です。しかし、数学を重視する早稲田大学とは異なり、慶應義塾大学は数学能力を絶対的な基準とはしていません。これにより、慶應は忠誠心を持つ学生を採用しようとする傾向が強いです。
**■ 上智大学の低迷**
かつて「早慶上智」と呼ばれた上智大学は、現在ではその枠から外れ、早稲田や慶應に大きく引き離されている状況です。上智大学の独自入試は難易度が高く、特に英語試験「TEAP」の導入が受験生に負担をかけ、結果的に受験生の流入を妨げているとの指摘があります。さらに、数学を軽視した入試制度が、学生の学力の幅広さを阻んでいるとも考えられています。
**■ 数学の重要性と個人の成長**
筆者自身も数学が苦手であったが、後に数学を再学習し、その重要性を認識しました。数学の学習は論理的思考を養うため、社会で成功するためには不可欠です。数学的能力は後天的に身につけることができるため、全ての学生が最低限数学を学ぶべきであると強調されています。
**■ 結論**
早稲田大学が数学を必須科目とした改革により成功を収め、慶應義塾大学と上智大学との差が広がっています。特に数学を重視する早稲田の入試改革が学生の質向上に寄与し、今後の社会におけるリーダーを輩出するためには、数学的な思考力が重要であるという点が浮き彫りとなっています。