モスクワ高級不動産が予想外の活況、価格は今やロンドン・パリ並み

1. モスクワの高級不動産市場の活況
モスクワの高級不動産市場が予想外の活況を呈している。ウクライナ侵攻から約3年が経過し、ロシアの超富裕層が 国外での資産運用の選択肢を失い 、国内不動産に資金を集中させているためだ。制裁の影響で資本を国外に分散することが困難になり、安全な投資先としてモスクワの高級不動産が選ばれている。さらに、 インフレ抑制のためにロシア銀行が金利を引き上げたこと も、不動産をインフレヘッジの手段とする動きを後押ししている。

2. 価格の上昇と市場の成長
モスクワの高級不動産市場は世界の主要都市と並ぶほどの価格上昇を見せている。不動産コンサルティングの NFグループ によると、 1平方メートル195万ルーブル(約300万円)以上の物件の販売件数は前年比40%増加 し、価格も21%上昇。これは ロンドンやパリと同等 の価格帯である。

戦争関連の政府支出が経済を支えている一方で、 高インフレと高金利が続くロシア経済の不均衡が浮き彫り になっている。また、ロシア人投資家が 海外の投資機会を制限され、本国に資金を戻している ことが、不動産市場の活況を後押ししている。

3. 超高級物件の登場
モスクワでは ドバイやロンドンを彷彿とさせるような超高級物件 も登場している。例えば、 歴史的な建築家が設計し、デベロッパー「ベスベル」が改装した1161平方メートルの高級マンション は、2023年の販売価格が 約38億ルーブル(約60億円) に達した。こうした高級物件がモスクワの中心部で次々と建設されている。

4. 購入層の特徴
モスクワの高級不動産市場に殺到している買い手は、 40~50歳の富裕層 が中心で、 鉱工業企業のオーナーや経営幹部、IT、ショービジネス、スポーツ業界の著名人 も含まれる。彼らは 安全な資産保全手段として国内不動産を選択 している。

5. ロシア人富裕層の海外不動産市場からの撤退
ロシア人富裕層が完全に海外不動産への投資をやめたわけではないが、 2022年にロシア人の主要な投資先だったドバイでは急速にロシア人離れ が進んでいる。ドバイの不動産仲介業者 ベターホームズ によると、 2022年に最大の買い手だったロシア人は、2023年には9位に転落 した。

また、 不動産コンサルティング会社「インターマーク・インタウン・セールス」 によると、 ロシア人富裕層の海外不動産への需要は前年比24%減少 した。一方で、 インドネシアのバリ島やタイ などは引き続き人気があるものの、全体的に 海外投資から国内投資へとシフト している。

6. 今後の見通し
モスクワの不動産市場は 制裁の影響で富裕層の資金が国内にとどまる限り、短期的には活況が続く と予測される。ただし、 高インフレと金利上昇 による景気減速や、 戦争の長期化 による経済不安が、不動産市場にどのような影響を与えるかは不透明である。

原題:Moscow Property Rivals London as Rich Russians Bring Cash Home(抜粋)

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