階段を上ると最初に迎えてくれるのが、丸みを帯びた彫刻のようなステンレスキッチンだ。「料理も好きですが、みんなで火や食事を囲むのが好きなんです。キッチンが手前にあるので、そこに人が集まりやすい。まずはキッチンで立ったまま乾杯することが多いですね。そのあとはダイニングで食事をしたり、リビングでおしゃべりをしたり、居場所を変えながら楽しめるのが気に入っています」と奥様。今回訪れたのは、建築設計や森林コンサルティングを手掛ける会社ADXの安齋好太郎さんが自ら設計した住まい。築45年を経たマンションのメゾネットを改装し、奥様、お子様と暮らしている。
コミュニケーションの中心となるキッチンだからこそ、デザイン性、機能性ともにこだわった。夫妻が選んだのは、業務用厨房機器で広く知られるタニコーの家庭用フルオーダーキッチン「MEISDEL(マイスデル)」だ。きっかけは、安齋さんがクライアントのための別荘を設計する際、マイスデルを採用したこと。
「日常とは異なる心が弾むような別荘にしたかったので、プロ仕様の機能を備えながら、インテリア性も高いマイスデルがぴったりだったんです。実際に採用してみて、クオリティーはもちろん、求める機能やデザインを全力でかなえてくれるチームに絶大な信頼感が生まれ、自邸のキッチンも依頼しました」
信頼感があったからこそ、自邸では新たな試みに挑戦している。四隅がカーブした台形のアイランド型カウンターをデザインし、その滑らかなラインを造形。さらにそれを浮かせるように木製の台座を造作し、彫刻のようなフォルムを実現した。カウンター下には収納を設けているが、コーナーは扉がカーブしたまま開閉する斬新な設計だ。
「木材や官材、タイルなど自然素材を多用したため、シャープなステンレスを取り入れてバランスを取っています。一方で直線的なデザインだと柔らかな印象の空間になじまないので、丸みを出しました。人が集まる場所としても、丸みが大切でした」
マイスデルにとっても初めての挑戦で、工場の職人とスケッチをやりとりしながら試作を繰り返して実現したもの。ステンレスの高い加工技術を持つ同社だからこそ、斬新なデザインにも柔軟に対応し、“こんなこともできる”という表現の幅を、改めて提示するキッチンが生まれた。
もちろん、日々の使い勝手にも配慮されている。「シンク下にゴミ箱とコンポストの置き場を確保したり、持ち物の大きさに合わせて収納棚を用意したり。調理道具や食器が好きなので物量があるのですが、カウンター下にすっきりと収まっています」。天板と扉材はマットな仕上げを施したステンレスのため、掃除がしやすいだけでなく、指紋や小さな傷がついても気にならない。
住まいの主役となる唯一無二のキッチンが実現したのは、フルオーダーだからこそ。ステンレスを生かしながら幅広い要望に応えるマイスデルの可能性は無限だ。
●問い合わせ
タニコー MEISDEL室 TEL 03-5498-7112
※『Nile’s NILE』2024年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています