「これが、全然おいしくないんです。北海道のパウダースノーだと、シロップで瞬時に溶けちゃう。雪と、氷を削ったものはまったくの別ものなのだということがよくわかりました」
あくなきかき氷への情熱、感心するしかない笑い話だ。
ところで、息子の優くんが1歳くらいのときに、いたずら心から、かき氷を口の中に少しだけ入れてみた。よほど驚いたのか、泣きわめいてまったく受け付けなかったという。
それがトラウマになったというわけでもないだろうが、6歳になった今も、かき氷はまったく食べてくれず、それをほんの少し寂しいと思っている。
今年は町内会の夏祭りが中止になってしまったが、来年こそは、かき氷機をレンタルして、子供たちに100円くらいで食べさせる屋台を出そうと思っているそうだ。そうすればきっと息子もかき氷好きになってくれるに違いない。そんな思いも抱きながら、夢を膨らませている。
幡野広志 はたの・ひろし
1983年、東京生まれ。写真家、元狩猟家。血液がん患者。2010年から広告写真家・高崎勉氏に師事。その後独立し、結婚。2017年に多発性骨髄腫を発病し自身のブログで公表すると、応援の声とともに、人生相談が送られてくるように。著書に『なんで僕に聞くんだろう。』(幻冬舎)など。新刊『ラブレター』(ネコノス)の出版を記念して「family」と題した展覧会を開催。
写真撮影 幡野由香里