Grand Prix d’Horlogerie de Genève 2024

「時計界のアカデミー賞」とも言われる「ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(略称GPHG)」。2024年度は15部門に各6モデル、計90モデルが最終ノミネートに残り、審査の過程で設けられた5部門を加え、全20部門の受賞作と総合グランプリの「金の針賞」が発表された。時計界のダイナミズムを伝える、この結果を速報する。

Text Yasushi Matsuami

「時計界のアカデミー賞」とも言われる「ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ(略称GPHG)」。2024年度は15部門に各6モデル、計90モデルが最終ノミネートに残り、審査の過程で設けられた5部門を加え、全20部門の受賞作と総合グランプリの「金の針賞」が発表された。時計界のダイナミズムを伝える、この結果を速報する。

Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024
Aiguille d’Or” Grand Prix
IWC Schaffhausen
Portugieser Eternal Calendar

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4時半位置にのぞく400年で1回転する歯車により、一般的なパーペチュアル・カレンダーをしのぐ、永久に正確な日付を表示可能なエターナル・カレンダー機能を搭載。ムーンフェイズは4500万年に1日の誤差しか生じない驚異の高精度を誇る。ホワイトラッカー仕上げのガラス製文字盤と、ガラス製インダイヤルによる立体感も目を引く。
「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー IW505701」自動巻き、ケース径44.4㎜、PTケース×サントーニ社製アリゲーターストラップ、5気圧防水、価格要問い合わせ。

11月13日、「ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ2024」の結果が発表された。総合グランプリの「金の針賞」に輝いたのは、IWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」だった。通常のパーペチュアル・カレンダーでは対応していない、100年に1度、さらに400年に1度のイレギュラーなうるう年規定もカバーしたエターナル・カレンダーを搭載。さらにムーンフェイズは4500万年に1日の誤差しか生じない驚異の高精度を誇り、ギネスブックにも登録。チャレンジングでありつつも王道的、しかも話題性もあり、この受賞は順当なものと映った。

筆者はハジメ・アサオカとグランドセイコーという日本からの2ブランドがノミネートに残ったメンズ・ウォッチ部門に注目していたが、ここはGPHG常連のカリ・ヴティライネンが制した。

一方、日本からチャレンジ部門にエントリーしていた大塚ローテックが栄冠を手にしたのは快挙。ノミネートされた3部門全てを制したヴァン クリーフ&アーペル、6部門にノミネートされ2部門で受賞したショパールにも称賛を送りたい。

昨年「金の針賞」に輝いたオーデマピゲが不参加など、やや寂しい話題がありつつも、ビッグメゾンと独立系とが入り交じり、時計界のダイナミズムを存分に伝える結果となった。各部門の受賞作の中から、日本でもアクセスしやすいブランドのモデルをここに紹介している。及び4ページ目には受賞を逃しながらも、注目すべきノミネート作もセレクトした。

  • Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024 Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024
    Time Only Prize
    H. Moser & Cie
    Streamliner Small Seconds Blue Enamel

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    ケースから流れる曲線をつなぐような一体型ステレンレススチール製ブレスレットの「ストリームライナー」は、今やメゾンのフラッグシップ的存在に成長。18番目となる自社製キャリバー、マイクロローター式のHMC500を搭載。グラデーションが美しいフュメダイヤルを新たに解釈し、グランフーエナメルで独特な質感に仕上げたアクアブルーフュメダイヤルも秀逸。
    「ストリームライナー・スモールセコンド ブルー エナメル」自動巻き、ケース径39㎜、SSケース×SSブレスレット、12気圧防水、5,346,000円。
  • Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024 Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024
    Iconic Watch Prize
    Piaget
    Piaget Polo 79

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    創業150周年を記念し、1979年に発表された伝説的なフルゴールド仕様の「ピアジェ ポロ」のファーストモデルのデザインを踏襲しながらアップデート。ケース、文字盤、ブレスレットのリンクにいたるまで、ホリゾンタルなゴドロン装飾がアイコニックな魅力を放つ。自社製のマイクロローター式超薄型キャリバー1200P1を搭載する。
    「ピアジェ ポロ 79」自動巻き、ケース径38㎜、YGケース×YGブレスレット、5気圧防水、11,792,000円。
  • Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024 Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024
    Eco-innovation Prize
    Chopard
    L.U.C Qualité Fleurier

    ―――
    当初「タイムオンリー」部門にノミネートされていたが、急きょ設けられた「エコ-イノベーション」部門で受賞。スイスの時計メーカーや、医療、航空宇宙、自動車産業などからのリサイクルスチールを少なくとも80%用いた独自のルーセントスティール™をケースに採用。フルリエ地区での高度な品質認証であるカリテ フルリエでは、初となる同認証取得モデル。
    「L.U.C カリテ フルリエ」自動巻き、ケース径39㎜、ルーセントスティール™ケース×カーフストラップ、30m防水、3,003,000円。
  • Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024 Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024
    Challenge Watch Prize
    Otsuka Lotec
    No.6

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    プロダクトデザイナーから時計製作に転じた片山次朗氏によるブランド、大塚ローテック。独立時計師の浅岡肇氏が指揮を執る東京時計精密と協力関係を構築し、品質も国内外での評価も急上昇する中、3000スイスフラン(約530,000円)以下を対象とする「チャレンジ」部門で受賞の快挙。この「6号」は時分の同軸2針レトログラード機構を搭載。エレキギターの弦をバネに用いていることも興味深い。
    「大塚ローテック 6号」自動巻き、ケース径42.6㎜、SSケース×カーフストラップ、5気圧防水、440,000円。
  • Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2024
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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「Nileport」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。