精度のパイオニアとしての矜持

4月に開催されたウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024で、ジャガー・ルクルトは「精度のパイオニア」をテーマに掲げた。1833年にアントワーヌ・ルクルトによって創業されて以来、精度の追求は常にメゾンの中核をなす価値観であり続けてきた。その矜持を、デュオメトルとマスターコレクションの新作に見いだす。併せて、5月に発表されたポラリスの新作、メゾンのフラッグシップたるレベルソの逸品も紹介し、これまでの足取りを踏まえ未来へと向かう、ジャガー・ルクルトの現在地を確認する。

Photo Takehiro Hiramatsu(digni)P1  Text Yasushi Matsuami

4月に開催されたウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024で、ジャガー・ルクルトは「精度のパイオニア」をテーマに掲げた。1833年にアントワーヌ・ルクルトによって創業されて以来、精度の追求は常にメゾンの中核をなす価値観であり続けてきた。その矜持を、デュオメトルとマスターコレクションの新作に見いだす。併せて、5月に発表されたポラリスの新作、メゾンのフラッグシップたるレベルソの逸品も紹介し、これまでの足取りを踏まえ未来へと向かう、ジャガー・ルクルトの現在地を確認する。

精度のパイオニアとしての矜持 ジャガー・ルクルト
デュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・パーペチュアル
9時位置の開口部にメゾン初の3軸トゥールビヨン、さらに4桁の西暦表示を持ったパーペチュアルカレンダー、グランドデイトも備えた超複雑機構の傑作。パワーリザーブ46時間のキャリバー388を搭載する。手巻き、ケース径44㎜、PGケース×アリゲーターストラップ、3気圧防水、世界限定20本、価格要問い合わせ。

ジャガー・ルクルトはウォッチズ&ワンダーズの会場に往時の鍛か冶じ場にインスパイアされたブースを設営し、1833年の創業以前のメゾンのルーツにオマージュを捧げた。

創業者アントワーヌ・ルクルトの10代前の祖先ピエール・ルクルトが、宗教改革の最中、ジュネーブへと逃れた後、ジュウ渓谷にたどり着いたのは1559年と伝わる。鉄や木材などの天然資源が豊富で、鍛冶場を中心とする冶や 金きん産業が盛んになりつつあったこの地で、ルクルトファミリーは代々その発展に尽力してきた。

アントワーヌ・ルクルトは、優れた鍛冶職人だった父ジャック・ダヴィドから16歳の時に冶金技術を学び始め、1833年に時計製造工房を興す。その3年前にはすでにピニオンの歯をかつてない精度で切削する工具を完成させ、1844年にはミクロン単位での計測が可能な世界初の測定器、ミリオノメーターを開発。この二つは、その後の時計製造業全体の進化に寄与していく。16世紀以来のジュウ渓谷におけるルクルト家の伝統である「精度」へのこだわりが、脈々と受け継がれてきたのが分かる。

今年、ジャガー・ルクルトは「精度のパイオニア」をテーマに掲げた。時計の正確性を向上させる「計時性能の精度」はもちろん、微細なコンポーネンツまでもこのうえなく精密に仕上げ、精せい緻ち に組み上げる「製造の精度」にも力を注ぎ、今やシリンダー型や球体型の特殊なヒゲゼンマイ、さらに多軸トゥールビヨンとして知られるジャイロトゥールビヨンなども開発し、「調速機構の精度」「複雑機構の精度」についても、他の追随を許さない高みに達している。

そのプライドを、2007年に発表したデュオメトル機構に再解釈を加えた新作で示した。デュオメトルとは、時刻表示用とそれ以外の機能用に独立した二つの輪列と香箱を備え、複雑機能の作動中にも時刻表示の動作精度を保証する、「精度のパイオニア」ならではの機構だ。

「デュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・パーペチュアル」は、メゾン初の3軸トゥールビヨンを搭載し、かつてない複雑で優美な動きが目を楽しませる。「デュオメトル・クロノグラフ・ムーン」は、6分の1秒計測が可能なクロノグラフとムーンフェイズを備えた新開発キャリバーを搭載する。カレンダーとムーンフェイズを搭載した「デュオメトル・カンティエーム・ルネール」は、デュオメトルとしては初となるスチールケースが採用されている。

また、メゾンを象徴する一つであるマスターコレクションからは、「マスター・ウルトラスリム・パーペチュアルカレンダー」の新作4モデルも登場。中でもピンクゴールドケースにミッドナイトブルーのグラデーションダイヤルを組み合わせたモデルは、つやめいたエレガンスが際立っている。それでいて、時分針の軸のすぐ上に設けた小さな開口部に、時刻やカレンダー調整してはならない時間帯を示す機構も備えている。「精度のパイオニア」としての配慮が、そんな細部にまで行き届いている。

  • 精度のパイオニアとしての矜持 ジャガー・ルクルト 精度のパイオニアとしての矜持 ジャガー・ルクルト
    デュオメトル・クロノグラフ・ムーン
    新開発キャリバー391を搭載。9時半位置に時刻と昼夜表示、2時半位置にクロノグラフの時分同軸積算カウンターとムーンフェイズ、6時位置に6分の1秒計測カウンターを備える。6時半位置には時刻表示用、5時半位置には複雑機能用の各50時間のパワーリザーブ表示も。手巻き、ケース径42.5㎜、PTケース(右)またはPGケース(左)×アリゲーターストラップ、5気圧防水、ともに価格要問い合わせ。
  • 精度のパイオニアとしての矜持 ジャガー・ルクルト 精度のパイオニアとしての矜持 ジャガー・ルクルト
    (左)デュオメトル・カンティエーム・ルネール
    深いブルーのグラデーションダイヤルがモダンな印象。パワーリザーブ50時間のキャリバー381を搭載。手巻き、ケース径42.5㎜、SSケース×アリゲーターストラップ、5気圧防水、6,952,000円。

    (右)マスター・ウルトラスリム・パーペチュアルカレンダー
    70時間のロングパワーリザーブを誇るキャリバー868を搭載。ケース厚9.2㎜の薄さをキープしつつ、プロポーションをよりスリムにアップデート。自動巻き、ケース径39㎜、PGケース×アリゲーターストラップ、5気圧防水、6,380,000円。
  • 精度のパイオニアとしての矜持 ジャガー・ルクルト 精度のパイオニアとしての矜持 ジャガー・ルクルト
    (左)ポラリス・ジオグラフィーク
    トラベルタイム機構としてつとに知られるジオグラフィーク。6時位置に第2時間帯表示とナイト&デイ表示を装備。ダイヤル下の開口部には、サマータイム表示を添えた24の主要タイムゾーン表示があり、10時位置のリュウズ操作で第2時間帯表示と連動する。パワーリザーブ70時間のキャリバー939を搭載する。自動巻き、ケース径42㎜、SSケース×ブラックラバーストラップ(ファブリックストラップ付属)、10気圧防水、2,508,000円。

    (右)ポラリス・パーペチュアルカレンダー
    70時間のパワーリザーブ持つキャリバー868を搭載。12時位置に4桁の西暦表示と月、3時位置に曜日、9時位置に日付、6時位置には北半球のムーンフェイズに加え、南半球の月相を示すレトログラード針も備える。自動巻き、ケース径42㎜、PGケース×グリーンラバーストラップ(アリ
    ゲーターストラップ付属)、10気圧防水、8,140,000円。
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    (左)レベルソ・トリビュート・クロノグラフ
    1996年に発表された初の「レベルソ・クロノグラフ」を着想源に開発された新キャリバー860を搭載。パワーリザーブは52時間。アルゼンチンのポロブーツの名門、カーサ・ファリアーノ社デザインのストラップが二本付属し、インターチェンジャブルシステムにより、自身で付け替えも楽しめる。手巻き、サイズ49.4×29.9㎜、PGケース×カーフ+キャンバスストラップ(カーフレザーストラップ付属)、3気圧防水、6,072,000円。

    (右)レベルソ・クラシック・スモール・デュエット
    表は放射状のギョーシェと縦ラインのサテン仕上げを組み合わせたシルバー文字盤にアラビア数字のインデックスを配し、裏面はオパーリンとサンレイギョーシェによるブラックダイヤルの上下にダイヤモンドをライン状にセッティング。手巻きキャリバー844を搭載。パワーリザーブ38時間。手巻き、ケースサイズ34.2×21㎜、PGケース×PGブレスレット、3気圧防水、5,896,000円。
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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。