2025年「アジアのベストレストラン50」

食のトレンドを発信するレストランランキング「アジアのべストレストラン50」が、去る3月25日にソウルで開催。7年ぶりにタイのガガンが1位に返り咲いた。

Text Hiroko Komatsu

食のトレンドを発信するレストランランキング「アジアのべストレストラン50」が、去る3月25日にソウルで開催。7年ぶりにタイのガガンが1位に返り咲いた。

2025年「アジアのベストレストラン50」
ソウルのグランドハイアットで開催された「アジアのベストレストラン50」の授賞式。

2年連続、ソウルで行われた「アジアのベストレストラン50」のアワード。今年はイテウォン地区のグランドハイアットソウルのボールルームで関係者約1000人を迎え、晴れやかに開催された。パーティー会場には、サンペリグリノ&パンナをはじめ、世界の食を牽引するメーカーがブースを出し、華やかさを盛り上げる。その中には、公式スポンサー4年目となる獺祭がいよいよ存在感を増し、鏡開きには多くのゲストが嬌声を上げた。改めて、SAKEの人気の高さを認識させられる。

さて、授賞式の会場もまたいつもながらに熱気に満ちていた。特別賞の発表をはさみながら、50位から順に読み上げられていく。どの店舗も一つでもあとに読み上げられたいという緊張感が伝わってくる。

2025年「アジアのベストレストラン50」
2025年「アジアのベストレストラン50」で1位を獲得した「ガガン」チーム。

2025年の1位はタイの「ガガン」が獲得した。過去、4年連続1位を続けたが、店舗の移転などもあり、そのたびに進化を続けてきたガガンが7年ぶりの再び1位へ。31位にはルイヴィトンとコラボレーションした「ガガン アット ルイ ヴィトン」もランクイン。そのパティシエは、「アジアのベスト ペイストリー シェフ賞」を受賞するなど、ガガンチームの活躍が目立った。2位は香港の「チェアマン」。言わずと知れたレジェンドシェフで、4年前には1位に、昨年は「アイコン章」(功労賞)を受賞。長らく、広東料理の素晴らしさを世界へ広めることに尽力してきた。3位は同じく香港の「ウィング」。伝統的なアワビやナマコなどの乾物を巧みに使いながらもコンテンポラリーな料理を供する。シェフのヴィッキー・チェン氏はシェフが選ぶシェフ賞である「シェフズチョイス賞」を受賞。4位に昨年1位を取得した日本の「セザン」。5位は開催国であるソウルの「ミングル」で、昨年の13位からジャンプアップ。名実ともにコリアンキュイジーヌを牽引するトップレストランである。ソウルでの2年連続開催が、韓国の美食を軸にした観光誘致の結果に早くも寄与しているといえそうだ。

2025年「アジアのベストレストラン50」
「アジアのベストソムリエ賞」を受賞した「クローニー」のオーナーソムリエ小沢一貴氏。

日本にとって、最も誇らしかったのは、「クローニー」のオーナーソムリエ小沢一貴氏が「アジアのベストソムリエ賞」を受賞したことだ。3年前に設立された賞だが、日本人では初受賞。世界に通用するソムリエとして認められたことになる。店舗の「クローニー」も昨年の76位から30位に初ランクインの、ダブルでコングラチュレーションである。

そのほかの日本のランキングをまとめると、8位大阪の「ラシーム」。11位に「NARISAWA」。17位に「フロリレージュ」。22位に「傳」。33位に「鮨さいとう」が返り咲き。34位に「茶禅華」。36位に福岡から「Goh」。43位に「MAZ」。45位に「明寂」。

ベスト50は、時代性を反映するランキングとしても知られるが、近年大切にされているのが多様性とサステナビリティ。今年のサステナブル賞は、92位のバリの「ロカボールNXT」。地域密着型の季節感にあふれる料理が評価された。また、初めてラオスから「ドイカノイ」が86位にランクインしたことも大きい。これを機にガストロノミーの多様化がますます進むに違いない。この秋からは、カリブ諸島を含む北アメリカのベストレストランが発表されるという。また、3年前に始まったミドルイースト+北アフリカエリアも、アフリカ全土に広げるという動きもあるそうだ。ベスト50の広がりは、世界を食でつなぐ新しい試み。これからの動向からますます目が離せない。

ラグジュアリーとは何か?

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