秋のメニューは、じゃがいも、白いんげん豆、帆立貝の心も体も温まるスープから始まる。次がかぼちゃと茸の一皿。そしてさつまいもとセロリという、一般的にはめずらしい組み合わせのグラタンだが、パン粉のさくさく感が絶妙。まさに“Farm to Dining”というコンセプトを体感できる皿が続く。そして日光市産舞茸のタリアテッレは、うまみの深さに驚かされることだろう。「パスタの塩加減とゆで加減を学ぶのに半年かかりました」と中村健介総料理長が言うほど、小林シェフの指導は本気かつ厳しいものだった。「ホテルという昼夜多くの席数を回していく必要がある組織の中で料理を作るのと、一組のお客様のために料理をするのではどうしても違いが出てきます。お出しする直前に火を入れるといったあたりまえのことがホテルでは難しいわけです。そこでなるべくそれを実現しながら、組織の中でもできる料理を組み合わせて、ザ・リッツ・カールトン日光にふさわしいコース料理に仕立てました。もちろん、指導する立場ですが、逆に学ぶこともすごく多い。発見の連続です」と。実際、頻繁に足を運び、スタッフとの連携を強めている。監修というと、名ばかりの場合も多い中にあって、小林シェフの本気度がうかがえる。

後半のメインディッシュの魚の項にはサステナブルフィッシュと書かれている。それは、無理して同じ魚をそろえるというようなことをせず、その日に揚がった魚を自然に使う、漁師さんや魚屋さんに負担をかけないサステナブルな考え方がコンセプトという意味だ。この日は鯛に季節のきのこを添え、白ワインを贅沢に使ったブールブランソースの一皿。メインの肉はとちぎ霧降高原牛のいちぼを使用。山芋を敷き、上には50種米と玉葱のチップスを載せ、赤ワインソースでいただく、ロッシーニ風の一品。大きな落花生や牛蒡も食感のアクセントになり、楽しい一皿に仕上がっている。
コースは食材の変化とともに、季節ごとに変わっていくという。「12月からの冬のメニューチェンジのために、日光通いが続きます」と笑う小林氏。「寛司シェフのお名前を立てて提供するからには、その名に恥じないような料理を作っていかねばと、おのずと力が入ります」と中村料理長もうなずく。
中禅寺湖やリバーサイドを望むラグジュアリーなゲストルーム、有名バーテンダーを招聘するバーの楽しみ、温泉やスパ、ネイチャーウォーキングなど魅力的なアクティビティの数々。「レークハウス」での食事を軸に、都会の喧騒を忘れて宿泊し、ゆっくりと時間を過ごすのが一番であるが、東京からのアクセスのよさを考えると、気軽に食事だけを楽しみにくるのもまた素敵だ。小林シェフの料理が食べられるのは、和歌山の本店と「ザ・リッツ・カールトン日光」だけなのだから。
●ザ・リッツ・カールトン日光
栃木県日光市中宮祠2482
TEL 0288-25-5776(ザ・リッツ・カールトン日光 レストラン予約直通)