名残の夏 落ち鮎・落ち鱧

季節の喜びを表現することに力を入れている「茶禅華」の川田智也さん。「落ち鮎」と「落ち鱧」。どんな料理を披露してくれるのだろう。

Photo Masahiro Goda  Text Hiroko Komatsu

季節の喜びを表現することに力を入れている「茶禅華」の川田智也さん。「落ち鮎」と「落ち鱧」。どんな料理を披露してくれるのだろう。

茶禅華、名残の夏ーー落ち鮎・落ち鱧ーー
川田智也 かわだ・ともや
1982年、栃木県生まれ。「麻布長江」にて10年間にわたり四川料理を修業した後、「日本料理龍吟」に入門。同台湾店である「祥雲龍吟」の立ち上げから参加し、副料理長を務める。帰国後、準備期間を経て2017年2月に「茶禅華」をオープン。

夏の終わりを告げる名残の食材「落ち鮎」と「落ち鱧」。細やかな日本の季節感を表す、なんと情緒豊かな言葉であろうか。

「落ち鮎」とは、夏の終わりに子を持ち、産卵のために川を下る鮎のことをいう。また、子を産んだあとに再び滋養を蓄え、うまみを増す秋の鱧が「落ち鱧」である。

これらの食材を最大限に活かした料理を提供するのが、押しも押されもせぬ、日本を代表する中国料理店「茶禅華」である。オーナーシェフの川田智也さんは、食材の「走り、旬、名残」といった時期ごとの特性を見極め、それぞれの味を引き出すことに注力している。夏から秋にかけての鮎と鱧の料理は、その集大成だ。

背ごしという料理をご存じであろうか。生きたままの鮎を食べる産地では、生の刺し身として食べる手法も、突き出しなどには欠かせない。

茶禅華のスタイルは、紹興酒に漬けて酔っ払い鮎にしたものを刺し身にする。鮎のこりこり感と清涼感が楽しめるこの料理は、鮎の魚醤と紹興酒を合わせた特製たれで味わう。茶禅華の夏の定番料理である。

「鮎の魅力はなんといっても肝の清冽(せいれつ)な苦みと清涼感のある身質にあります」という川田さん。それを最大限に生かした料理がこの一品だ。

  • 茶禅華、名残の夏ーー落ち鮎・落ち鱧ーー 茶禅華、名残の夏ーー落ち鮎・落ち鱧ーー
    鮎の紹興酒漬けの背ごし
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    鮎のおこげ揚げ 五粮液(ウーリャンイエ)の香りを添えて
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    鱧のひゆ菜と生姜 酸辣味 芙蓉の花に見立てて
  • 茶禅華、名残の夏ーー落ち鮎・落ち鱧ーー
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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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