「シングルスレッド」といえば、2016年にオープンして最速でミシュラン三つ星を獲得したコンテンポラリー創作ジャパニーズの名店。ジョフロワ氏とコノートン氏は、盟友とも言えるほど、お互いをリスペクトしており、IWAが自由な酒であるから、あえてメニューへのリクエストは出さなかったそうだ。その中でコノートン氏は「一期一会の出会いを大切にし、自分たちのレストランでも、毎日、ストーリーを紡いでいる延長上で今回のイベントを考えた」と。山菜をテーマに自由にメニューを構成した。
ゲストの中には、蔵の設計者である隈研吾氏の顔もあった。多忙の合間を縫って、長年の知己であるジョフロワ氏に会いに、そして、至高のマリアージュを楽しむために訪れたのだ。蔵を建てるために二人でいくつもの土地を回った中で、白岩のこの土地を一目で気に入り、即決したのだという。そのテロワールがIWAには十二分に反映されている。
桜鱒の土鍋スモークやのどぐろの焼き物には、IWAの温度帯を上げて酸を増し料理に寄り添わせたり、メインの土鍋炊きご飯には、熟成酒をブレンドした「IWA 5 リザーブ」を大ぶりのグラスに注いで、よりその複雑さと奥深さを際立たせたりと自在なマリアージュが供された。桜を模したデザートで宴は華やかに幕を下ろし、その後は蔵を見学。清掃の行き届いた麹室などに、冬場の酒造りの時間へと思いがはせられた。こうして一行は、よき思い出とともに蔵に別れを告げた。
ジョフロワ氏は「愛とリスペクトを持って、日本文化の素晴らしさを発信したいとの思いから実現したコラボレーションです」と言う。日本から多くを学んだからこそ、そのお返しがしたいという、ジョフロワ氏とコノートン氏の共通した気持ちが、一皿一皿にIWAを寄り添わせた今回のコラボレーションが成功に終わった何よりの原動力だと言えよう。
※『Nile’s NILE』2024年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています