運気の上がる前菜盛り合わせ
一方、シグニチャーメニューの「運気の上がる前菜盛り合わせ」は、食事の冒頭でお客をワクワクさせる一品だ。「中国料理は縁起ものが大好き。この前菜では昇り龍をイメージして盛りつけています」といい、おめでたい尾頭付きの魚介類を皿の中心に、龍が昇るように上向きに配すのが定番だという。今回用いた「尾頭付き」はエビ。季節によってはキビナゴや稚アユとなることもある。
さらなる進化
なお田村氏のベースを形作っている盤石な四川料理の知識と技術は、22歳の時から修業した「麻布長江」のオーナーシェフ、長坂松夫氏から学んだものだ。その後、32歳の時に長坂氏から店を買い取り、10年間「麻布長江 香福筵(こうふくえん)」を営む。「『これは自分の料理』と言えるようになったのは後半の5年間くらいでしょうかね」という。
そんな時期を経て、2019年12月に満を持してオープンしたのが「慈華」だ。今までも10年間自店を営んできた田村氏だが、「慈華」では育んできたコンセプトをより明確に打ち出し、理想に邁進(まいしん)する。
新しい一幕を迎え、表現はより充実。厚みのある経験を経たうえで見せるさらなる進化に、注目が集まる。
田村亮介 たむら・りょうすけ
1977年東京都生まれ。実家は祖父が創業した中国料理店。調理師学校卒業後、数店での修業を経て2000年に「麻布長江」に入る。06年に料理長に。09年同店を買い取り「麻布長江 香福筵」オーナーシェフに。19年4月、建物の老朽化に伴い店を閉め、同年12月に「慈華」を開業。
●慈華
東京都港区南青山2-14-15 2F
TEL 03-3796-7835
www.itsuka8.com
※『Nile’s NILE』2021年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています