年を経るごとに研ぎ澄まされていく
原田慎次氏の料理の特徴は、フレッシュで涼やか、香り豊かな点。食材の風味を生かすよう、火入れや組み合わせる要素を入念、かつ柔軟に追求し、他にない透明感あふれる料理を作る。その軽やかさ、鮮やかさ、自由さは、まさにコンテンポラリーだ。
一方でイタリアの食への思いも強く、独立前から何度もイタリアに通う。一番印象に残っているのは、田舎の大家族の食事に招いてもらった時のこと。
「庭のハーブを、大量のゆでたてのパスタにオリーブオイルとともに軽くあえたおいしさは、まさに格別です」
独立開業への準備期間に、渡伊し料理を学ぼうとも思ったという。しかしこの時期、もう一つやりたいことがあった。それは、徹底的なテイスティングと試作。多種の塩、オリーブオイルを丁寧に味見し風味を把握したり、1日1万円の予算で毎日築地に買い物に行き、料理を試作したり。その結果、自分の中で香りと味に関する軸が確立。かけがえのないベースとなった。