あふれる活気、軽快なテンポ

活気に満ちたオープンキッチン。味に深みがありつつ、軽やかな料理。伝統とモダンがバランスよく織り込まれたコース。オープンから10年が経った「マサズキッチン」は、変わらず多くのお客の人気を集め続けている。元気なチームを率いるオーナーシェフの鯰江真仁氏は、節目を迎えてますます勢いに乗る。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

活気に満ちたオープンキッチン。味に深みがありつつ、軽やかな料理。伝統とモダンがバランスよく織り込まれたコース。オープンから10年が経った「マサズキッチン」は、変わらず多くのお客の人気を集め続けている。元気なチームを率いるオーナーシェフの鯰江真仁氏は、節目を迎えてますます勢いに乗る。

細切りアワビとキャビアが麺に絡む、人気の一品

今回紹介したアワビとキャビアの冷たい麺(次ページ)は、1年半ほど前からお出ししている評判のよい品です。当店は7~8品で作るコースをご提供していますが、この麺は、前菜のすぐ後でお出ししています。

中国料理で麺というと食事の締めに食べる印象が強いですが、これは、前半に持ってきているのがポイント。以前イタリア料理を食べた時、コースの前半に冷たいパスタが出てきたのをヒントに考案しました。

味わいの面でのポイントは、蒸しアワビを麺と同じくらいの細さに切ること。薄切りにすれば見た目ではアワビの存在感を強調できるかもしれませんが、味わうなら麺とよくなじむこの細さが断然おいしいです。

もともと中国料理では、青椒肉絲でもそうですが、細切りなら細切りという具合に、一つの料理の中では食材の形と大きさを切りそろえるのが定番。それを生かした仕立てです。なお麺は冷たい麺用に特別に製麺所で作ってもらっている、コシの強いもの。シコシコとした食感がアワビとよく合います。

一口食べれば、アワビの香りが口の中に広がり、そこにキャビアのコクのある塩気が混ざり合います。文句なしに美味、そしてコースの前半にちょっと変化をつけてくれる一品です。

初めての男の子。生活が変わりました

昨年の9月の終わりに、初めての男の子が生まれました。どの親でもそう思うのでしょうが、もう、かわいくてかわいくて(笑)。スマホで写真をたくさん撮り、待ち受け画面も子ども。これも、どの親御さんもなさることかもしれませんが(笑)。

鯰江氏のお子さん

子どもが生まれて、生活がガラリと変わりました。店と家が近いので、ランチとディナーの間に一度家に帰り、夕方5時にお風呂に入れるのが日課です。その時に私もお風呂に入り、体をサッパリとさせてからディナーの営業に向かいます。

以前はこの時間はジムに通っていたのですが、そちらはすっかりご無沙汰しています。

食べ歩きが好きなこともあって前はほぼ毎日外食でしたが、今は家で食べるようになりました。やはり子どもと一緒にいたいですから。

将来は料理人になってほしいかというと……つらい仕事なので、別の道をすすめますかね(笑)。ただ、私にとってはこの上ないモチベーションになってます。

ゴルフと旅行は、人生に欠かせない!

私は家に帰ったら、いっさい料理については考えないタイプです。「料理だけではない」ことが、人生において大切だと思っています。

特に私はゴルフが好きで、毎週の休みは基本的にいつもコースに出ているくらいなのですが、ゴルフを通じてさまざまな人と知り合い、社会を知ることができたのは自分の財産だと思っています。

料理人は、なかなか厨房の外に出られない。うちはカウンターなのである程度の社会性を鍛えることはできますが、やはり外を知ることで、人間として成長できます。「料理とは別の世界を持つこと」を、スタッフにも言い聞かせています。

なおゴルフとともに大好きなのが、旅行です。長い休みには夫婦で海外に出かけています。一番繰り返し行くのはハワイとロサンゼルスです。レストランにも行きますが、ストイックになるというより、店を楽しむ感覚です。

特に好きなのは、ビバリーヒルズの雰囲気です。ランチからお客さんが皆シャンパンを飲んでいたりして、陽気で楽しいんですよ。日本と違って、ダイナミックで開放的。そういう場に身をおくと、リフレッシュできますね。

ただ、子どもが生まれたから旅行はしばらくはお休み(笑)。いずれは、一緒に行きたいと思っています。

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。