堂々たるオーソドキシー

大阪ミナミは島之内。高畑均さんは「味吉兆」での15年の修業を経て、生まれ育ったこの地に自分の店を持った。そして、2000年の開業から20年、今も師匠・中谷文雄さんの教えを大事にしている。「毎日、昨日よりもおいしくなるように心がけなさい」。日本料理の王道を行く高畑さんである。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

大阪ミナミは島之内。高畑均さんは「味吉兆」での15年の修業を経て、生まれ育ったこの地に自分の店を持った。そして、2000年の開業から20年、今も師匠・中谷文雄さんの教えを大事にしている。「毎日、昨日よりもおいしくなるように心がけなさい」。日本料理の王道を行く高畑さんである。

太庵、キンキの塩焼きともち豚のスペアリブ
土佐の備長炭で焼き上げたキンキの塩焼きともち豚のスペアリブ。主菜はいずれかを選ぶスタイルだが、二人でシェアして両方を楽しむことができる。

独立志向はなく、「料理長になりたいな」と漠然と考えていた高畑均さんだが、あるとき、師匠の言葉に背中を押された。

「自分の店を持つことを目指さなければ、修業で身につくものは少ない」と教えられたのだ。独立の覚悟を固めているのといないのとでは、料理と向き合う“本気度”が違ってくる、ということだろう。

「生き方も含めて、師匠からは本当に多くを教えられました」と言う高畑さんが、今も肝に銘じていることがある。
それは「ずるいことをするな。ごまかすな。嘘をついて得することは何もない。どこから見ても恥ずかしくない仕事をする人間であれ」ということ。
当たり前のことのようだが、それを「ブレない軸」として意識することが大切なのだ。

そうして日々研鑽を積む中で、高畑さんが磨いたものの一つに「中庸」とも称すべき感覚がある。

「例えばキンキを焼くとき、身が反り過ぎないように串を打ちます。それは鮮度の良さを大げさすぎない程度に表現するためです。鮎なんかもそう。
『すでに死んでいることに気づかずに泳いでいる、くらいの表現にとどめなさい』と教わりました。飛び跳ねるような姿を連想できた方が魚の鮮度を強調できますが、そっちに目を奪われて『味わう』という肝心の行為がないがしろになってしまいますからね。どんな料理でも過度な演出は一切排除しています」

「また食材に関しては、産地に偏りが出ないよう心がけています。例えば牛肉なら『メスのA4・A5ランクをお願い』、タイなら『淡路でも愛媛でも、一番生きのいいのを』などと依頼しています。産地を指定しない方が、むしろ上質な食材が手に入ると思うのです。
オープンして以来、信頼関係を築いてきた目ききの業者さんと二人三脚で最高の食材を仕入れています」

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。