アート、ロジック、そして生命力

「HAJIME」は二つのジャンルでミシュランの三つ星を獲得した。最初はフランス料理で。その枠を超えたことで一つ星を減らしたが、再びイノベイティブのジャンルで星を取り戻した。この間、米田肇シェフは何を考えたのか。すべてが “型破り”の米田さんは指先から自然の生命力を紡ぎ出す。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

「HAJIME」は二つのジャンルでミシュランの三つ星を獲得した。最初はフランス料理で。その枠を超えたことで一つ星を減らしたが、再びイノベイティブのジャンルで星を取り戻した。この間、米田肇シェフは何を考えたのか。すべてが “型破り”の米田さんは指先から自然の生命力を紡ぎ出す。

HAJIME。愛が地球にあふれている様を表現したデザート
愛が地球にあふれている様を表現したデザート。お皿は特注のハート形。冷たいアイスに熱々のいちごソースをかけて。「愛は熱いけど、冷めやすいから、あたたかいうちにどうぞ」

「おいしいものをよりおいしくしたい、その一念で料理を突き詰めたら、この形になった、という感じですね。周囲からはよく『斬新だね』と言われますが、それは個人の受け止め方。中には『きれいなだけで、おいしくないんじゃない?』と先入観を持たれる方もいらっしゃいますけど、召し上がった瞬間においしさを実感していただいています。とにかくおいしくないとイヤなので、食材もいろんな産地のものをブラインドで選んでいます。生産者の顔が分かると、どうしても感情移入しちゃうので」

料理にどこまでもストイックな米田さんは、 “体づくり”にもストイックな様子。コックコートがはちきれんばかりの、筋肉隆々にしてスマートな体形にそれが象徴されていると感じる。「実は40歳を迎える頃、食べ歩きがたたって体がボロボロになったんです。ジムで鍛え直し、すっかり元気になりました。今も『1回1時間、3日トレーニングして1日休み』というペースで運動を続けている」そうだ。マッチョで健全な肉体から、美しくておいしくて骨太な料理がクリエートされている。

  • HAJIME、外観HAJIME、外観
    「HAJIME」はレトロなビルが点在する肥後橋辺りに立つ、ガラス張りのビルの1階。外観からしてモダンだ。
  • HAJIME、店内HAJIME、店内
    店内は白と黒の壁、グレーのフロアが特徴的なスタイリッシュな空間。フランス在住のRIKIZO(深尾力三)の絵がアクセントを添える。
  • HAJIME、外観
  • HAJIME、店内
HAJIME 米田肇氏

米田肇 よねだ・はじめ

1972年生まれ。エンジニアから料理人の道へ。エコール辻大阪を卒業後、関西のフランス料理店を経て2002年に渡仏。08年に「Hajime RESTAURANT GASTRONOMIQUE OSAKA JAPON」をオープン。12年5月に店名を「HAJIME」に改称。ミシュラン三つ星を獲得。

●HAJIME
大阪市西区江戸堀1-9-11
アイプラス江戸堀 1F
TEL 06-6447-6688
hajime-artistes.com

※『Nile’s NILE』2020年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。