仏跳牆
さて、今回紹介する「仏跳牆(フォーティアオチャン)」は、コロナで休業していた昨年の4月に、茶禅華の料理として完成したという。
「仏跳牆は、中国を代表する伝統的な高級料理の一つ。薬膳の効果のある山海の食材を壺に詰め、蒸して作るスープです」
今回の仏跳牆にはフカヒレ、鮑、干し貝柱などの海の素材、イノシシやキジ、ヒグマの肉などの陸の素材、朝鮮人参などの植物素材と、全部で21種類もの薬膳素材が入る。そして蓋を開けるとスープのかぐわしい香りが一気に立ち上る。
ちなみに、その香りが漂ってきたら、仏も思わず垣根(牆)を飛び越えて(跳)料理に向かうほど魅力的、というたとえがこの料理の名の由来となっている。
なお、もともと中国では、宮廷に仕える医者の中でも、皇帝の食事をつかさどる「食医」の位がもっとも高かった歴史がある。食が日々の健康に直結する、医食同源の思想がベースにあるのだ。
「仏跳牆も、ただ高級なだけでなく、滋養強壮の効果が高い。免疫力を高めてくれる料理なのです。なので、この料理には『コロナに勝つ』というメッセージが込められています」
この料理はまた、食のサステナビリティーにも配慮されている。たとえばイノシシは害獣駆除のために全国で仕留められているが、捨てられてしまうものが多く、全体から見ると食用への利用は少ない。
「そんな中でイノシシ肉を使うことはフードロス削減や食料自給率の問題の好転につながります。こうした活動に参加させていただいているので、駆除動物の活用には意識的でいます」