精度は進化を生む

2020年12月にミシュランガイドで三つ星を獲得するなど、勢いと充実度をいっそう増している「茶禅華」。シェフの川田智也氏は、昨年の緊急事態宣言に伴う臨時休業中に店と料理を強化するなど、コロナ禍のピンチをチャンスに変えた料理人の一人だ。また「食のサステナブル」という課題に意欲的に取り組むことでも知られる。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

2020年12月にミシュランガイドで三つ星を獲得するなど、勢いと充実度をいっそう増している「茶禅華」。シェフの川田智也氏は、昨年の緊急事態宣言に伴う臨時休業中に店と料理を強化するなど、コロナ禍のピンチをチャンスに変えた料理人の一人だ。また「食のサステナブル」という課題に意欲的に取り組むことでも知られる。

茶禅華。高級な薬膳素材を壺に詰め蒸し煮にする仏跳牆
高級な薬膳素材を壺に詰め蒸し煮にする仏跳牆は、美食でありながら滋養強壮の効果が望める、中国料理の「医食同源」の思想を象徴する一品。味つけはせず、風味づけに紹興酒を5滴たらすのみ。素材からにじみ出る、上品でありながら旨味豊かなエキスがスープの味を作る。

仏跳牆

さて、今回紹介する「仏跳牆(フォーティアオチャン)」は、コロナで休業していた昨年の4月に、茶禅華の料理として完成したという。
「仏跳牆は、中国を代表する伝統的な高級料理の一つ。薬膳の効果のある山海の食材を壺に詰め、蒸して作るスープです」

今回の仏跳牆にはフカヒレ、鮑、干し貝柱などの海の素材、イノシシやキジ、ヒグマの肉などの陸の素材、朝鮮人参などの植物素材と、全部で21種類もの薬膳素材が入る。そして蓋を開けるとスープのかぐわしい香りが一気に立ち上る。
ちなみに、その香りが漂ってきたら、仏も思わず垣根(牆)を飛び越えて(跳)料理に向かうほど魅力的、というたとえがこの料理の名の由来となっている。

なお、もともと中国では、宮廷に仕える医者の中でも、皇帝の食事をつかさどる「食医」の位がもっとも高かった歴史がある。食が日々の健康に直結する、医食同源の思想がベースにあるのだ。

「仏跳牆も、ただ高級なだけでなく、滋養強壮の効果が高い。免疫力を高めてくれる料理なのです。なので、この料理には『コロナに勝つ』というメッセージが込められています」

この料理はまた、食のサステナビリティーにも配慮されている。たとえばイノシシは害獣駆除のために全国で仕留められているが、捨てられてしまうものが多く、全体から見ると食用への利用は少ない。

「そんな中でイノシシ肉を使うことはフードロス削減や食料自給率の問題の好転につながります。こうした活動に参加させていただいているので、駆除動物の活用には意識的でいます」

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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