進化は変わらない

2021年でオープンから16年目を迎えるカンテサンス。岸田周三氏は料理に対するストイックな姿勢を貫きながら、レストランシーンのトップを走り続けてきた。コロナ禍に際しても、また業界で「サステナブル」の思想が新潮流を作り出しても姿勢はブレない。「これからも変わらない」と言いきる岸田氏からは、揺るぎない自信が感じられる。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

2021年でオープンから16年目を迎えるカンテサンス。岸田周三氏は料理に対するストイックな姿勢を貫きながら、レストランシーンのトップを走り続けてきた。コロナ禍に際しても、また業界で「サステナブル」の思想が新潮流を作り出しても姿勢はブレない。「これからも変わらない」と言いきる岸田氏からは、揺るぎない自信が感じられる。

カンテサンス、タケノコの料理
根付きのまま冷やされて静岡から届くタケノコは、掘り立てと同じ鮮度でえぐみがない。これを大ぶりに切り、軽いスープ・ド・ポワソンで煮た。クルマエビのゆでた身、揚げた頭と盛り合わせ、スープ・ド・ポワソンの泡を添える。タケノコをかむと、その香りが口の中に豊かに広がる。

タケノコの料理

今回紹介してくれたのは春の新作2品。一皿目のタケノコの料理は「タケノコのおいしさをフランス料理で表現する」がテーマだ。

まずポイントとなるのがタケノコそのものの質。今年出会った静岡の農家が、特別な手法でタケノコを包んで送ってくれることで、この料理は実現したという。

「農家さんが、根付きでタケノコを掘ってくれるんです。非常に面倒なのでやってくれる方はまれなのですが。そして保冷剤とともにラップで包んで送ってくれる。こうしたら、鮮度は掘り立てと変わりません。えぐみがまったくないのです」

その鮮度があるからこそ、この料理ではタケノコを、軽いスープ・ド・ポワソンでそのまま煮ることが可能になった。
「えぐみを抜くための下ゆでが不要。通常では下ゆでで抜けてしまう風味がしっかりと残ります」

また、タケノコの大きさもこの料理のポイントだ。
「タケノコのおいしさは、前歯でガブッとかむところにあると思います。かんで、口の中に香りが広がる感じが重要なのです。でも、フランス料理ではタケノコを、どうしても小さく切ってしまいがち。そこをあえて、大きな塊で残すことにしました」

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。