その間に、食材の質も向上した。今では、オーガニックとして昔ながらの作り方に立ち返る生産者も増えている。
「ワインの生産者を訪れた時、葡萄を食べさせてもらったらまずかったんです。そしたらその生産者が『昔の人は、これをおいしくするためにワインに加工したんだよ』と言って、その通りだと思いました。昔のものって茄子の皮が硬かったり、キュウリにトゲが生えていたりしておいしくなかったですよね。野菜も生き物だから、身を守るためにもおいしくなり過ぎちゃダメでしょう! すぐに他の生き物に食べられてしまう。でも、それを旨く食べられるようにしたのが料理なのです」
24歳でバルセロナで最初の店を出し、「エル・ブリ」での修業を経て、南麻布で今の店を出したのが12年前。ニューヨークとハワイでも出店するなど、やりたいことはやってきた。だからこそ、新時代に新しいものを生み出すのは若い世代に託したい。一方で「コンソメのような原点といえる料理も、選択肢として若い人に知っておいてほしい」と言う。
自身にも、今だからこそやりたいことがある。
「令和はもう一度、しっかり店でお客様と向き合いたい。そして、お客様が本当に求めているものを探したいです」
山田チカラ やまだ・ちから
1971年静岡県生まれ。熱海・大月ホテルのフランス料理店「ラ・ルーヌ」で研鑽を積んだのち、単独でヨーロッパに渡る。2度目の渡欧で“世界最高のレストラン”とも呼ばれたスペインの「エル・ブリ」のフェラン・アドリア氏に師事。2007年東京・南麻布に「山田チカラ」をオープン。茶の湯スタイルを取り入れた独創的な料理で話題を呼ぶ。2018年に「山田チカラ ホノルル」と「山田チカラ ニューヨーク」をオープンした。2019年にはバルセロナにも出店予定だ。
●山田チカラ
東京都港区南麻布1-15-2 1F
TEL 03-5942-5817
www.yamadachikara.com
※『Nile’s NILE』2019年8月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています