「ありがたいことに、僕の料理人人生と、時代の流れが不思議と合致しているのです」と渡辺雄一郎氏は言う。料理上手な母の料理を食べて育ち、辻調理師専門学校で学んだ昭和時代。平成元年にプロとして初めて現場に立つと、ポール・ボキューズ氏の「ル・マエストロ・ポール・ボキューズ・トーキョー」に入店した。
後に憧れていたジョエル・ロブション氏が東京にレストランを開業すると聞いて飛びつき、以降21年間、ロブション氏のもとで腕を磨く。エグゼクティブシェフを11年間務めた「ジョエル・ロブション」は9年連続で『ミシュランガイド東京』の三つ星を維持。そして、3年前に独立開業した「ナベノ-イズム」が、昨年末に発行された平成最後の『ミシュランガイド東京2019』で二つ星に昇格した。
「自分のやってきたことが間違っていなかった、と証明されたようで、ほっとして涙が出ました」
令和は、氏が確固たる自信を持って、自らの料理を披露できる記念すべき時として、幕開けを迎えたのだ。
「師のもとでずっとフランスを感じながら学んできたので、フランスの郷土料理や古典料理に根差したものであることは変わりません。その中で、日本人の僕にしかできない、日本の心とフランス料理の融合を目指したいと思っています」